爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「サッカーへの招待」大住良之著

1992年にJリーグが開幕したのはまだ記憶に新しいのですが、その直後のワールドカップのアジア予選でなんとか勝ち進み、最後のイラク戦で勝てば出場というところまできました。なんとか1点リードで試合終了間際、アディショナルタイムに入ったところでふらふらと上がったボールが日本ゴールに入ってしまい、ワールドカップ初出場の夢が消えた「ドーハの悲劇」は1993年のことです。この本はサッカーマガジンの編集長も勤められた大住さんが、その試合の直後にサッカーの大ブームの中で目を向けだした素人相手にサッカーの歴史から魅力、現代の戦法まで解説してくれたというものです。
私も学校の体育授業でのサッカーというのは経験がありましたが、高度な試合を観戦するということはまったくなく、参考にさせてもらいました。

中世の村と村の対抗戦のようなフットボールというのはあったとしても、スポーツとしてのサッカーが整備されてきたのは19世紀から、一気に人気スポーツに駆け上がったのは20世紀になってからです。スポーツといっても上流階級のものであった時代から、大衆が誰でもすることのできるスポーツに移行するにはちょうどぴったりのものがサッカーだったのでしょう。

ルール解説では、”むずかしくないオフサイド”という表題が時代を感じさせます。今では誰でも分かっているようなオフサイドですが、当時はなかなか馴染みにくかったことを思い出します。
戦法の話でも、フォワードとかディフェンスというのは聞いたことがありましたが、それ以上のことは皆目見当もつきませんでした。ボランチとかサイドバックとかいったポジション用語がこれほどポピュラーになるとは。

「サッカーのこれから」という章では、FIFAが取り組んでいたルール改正についての解説もあります。その当時はなにやら色々とやっているなと思っていましたが、ここになってあれこれの改正を思い返すと、その時点でのサッカーをとにかく魅力的にしようという意識の高さが再確認されます。ワールドカップでもその結果から明らかに「守りあい」に入ってしまって試合の魅力が薄れてしまっているという分析から、それを防ぐためにキーパーへのバックパスの制限など様々な取り組みがされており、その成果はかなり上がっているのではないでしょうか。ボールの反発力一つもコントロールできずにあたふたしている某スポーツが思い起こされます。

巻末にはサッカー普及の一環として、女子サッカーのことも触れられています。まさか著者の大住さんも日本女子サッカーがワールドカップ制覇をするということは、この本を書かれたときには想像していなかったことでしょう。

20年も経ったのかという観もありますが、それ以上にその間にワールドカップに連続出場を果たすというアジアの強豪となることができたと言うことは今になって考えると隔世の感というものです。まだまだ世界の超一流のチームには歯が立ちませんが、あの頃の感覚に戻れば感慨に耐えません。ヨーロッパのチームへの日本人選手の進出も言うに及ばないことです。

Jリーグ創設のころに日本にやってきてプレーした選手たちの紹介も懐かしいものです。リネカーラモン・ディアスなど、忘れかけていた名前も出てきました。