爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「DNA鑑定 暗殺、冤罪、浮気も暴くミクロの名探偵」櫻井俊彦著

アメリカで学び、現在は民間でありながら様々な法医学鑑定を実施している法科学鑑定研究所の研究者の櫻井さんがDNA鑑定についていろいろの方向から紹介したものです。
まずDNAというものが何かということも一般の人にはわかりづらいものですが、その辺も適度に解説してあります。
また最近の事件について、どのようにDNA鑑定が関わってきたかという動きの解説で非常に分かりやすいものになっています。
再鑑定という点では、足利事件で以前の判決の決め手となった鑑定を否定する形の再鑑定がありましたが、昔の鑑定が未熟で、現在の再鑑定が万能という単純な構造でもないようです。
歴史的な疑問を解くためにもDNAは使われており、ルイ17世やアナスタシアなど生存説や偽者の出現なども解決されてきました。
また、親子関係の証明には非常に強力なツールであり、事件がらみではなくても鑑定の依頼が多いようですが、家族関係の争いの元になっている事情を解明できるのは確かですが、それで幸せになれるとも限らないのも仕方の無いことでしょう。

かなり内容は高度のものなので、すべてのページの下部に注釈欄が設けてあり、本文の難しいところをすぐその下に解説してあるという、研究者らしい丁寧な構成になっていますが、著者のユーモアセンスを発揮されているところもありました。
また、ドイツで様々な事件の証拠品から同一のDNAが検出され、謎の黒幕がいるのではないかと考えられたことがあったとか、実はサンプル採取に使われる綿棒のメーカーの社員のものだったそうで、ドイツもメーカーの製造能力が低下しているようです。