戦前から戦後にかけて、法医学の第一人者として活躍していた古畑種基が、法医学についてかなり細かいところまで解説をしたものです。
古畑は血液型に関する研究では多くの業績を上げました。
法医学の基礎を作り上げたということも含め、文化勲章や勲一等瑞宝章を授章しています。
しかし四大冤罪事件と言われる、免田、財田川、松山、島田事件のうち免田事件を除く3件に関わっており、その鑑定には多くの問題があったようです。
この本は昭和34年、古畑が60代で東京医科歯科大教授在任中、すでに文化勲章も受けている時期に書かれたもので、一般向けを目指しているのでしょうが、内容はかなり専門的で医学生以上の人でなければ読みこなせなかったかもしれません。
第1部は「毒及び毒殺について」
各種毒物の詳しい作用なども解説されています。
第2部は一番の専門分野であった「血液による鑑定」
事件の現場での血液の鑑定もさることながら、当時から非常に問題であった親子関係の鑑別について詳しく書かれています。
第3部は「裁判と法医学」
犯罪の科学捜査を目指しているということは現れていますが、まだまだ困難だった時代なのでしょう。
「殺人者の容貌」などと言う章もあり、前時代的な雰囲気も残っています。
まあ、こういった歴史をたどって現在の科学捜査に至っているのでしょうが、あちこちに古い体質というものは見て取れるようです。