爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「日本人ビジネスマン”見せかけの勤勉”の正体」太田肇著

公務員など経験後、現在は同志社大学教授で、組織論や人事管理が専門の太田さんが日本の”勤勉”の正体について書かれた本です。
日本人は勤勉であるとはよく言われたことですが、その一方で特にホワイトカラーの生産性は極めて低いとも言われています。それがなぜかということを明らかにしてくれます。
「やる気」と言うことが常々言われていますが、実際はやる気を失わせるような人事管理が蔓延し、働く意欲を低下させるようなことばかりが続きます。

今でも一応「成果主義」と言うことが言われています。これはもちろん年功序列というものを打破するために、仕事をその成果だけで評価しようと言うもので、多くの企業で取り入れられていると言うことにはなっています。
しかし、著者の見るところ「成果主義」で人事評価をしていると言いながら、実際は多くの場所で行われているのは、仕事の成果ではなく「やる気」で評価している「やる気主義」であり、しかもそうすることによって働く人達の「やる気」を失わせ、見せ掛けだけ「やる気」があるように振舞うのが普通と言うことです。
仕事の成果を正確に見ることができないので、なんとなく長く職場に居続けるだけということになり、残業時間の長さだけを競うようになってしまいます。それで見るしかできなくなってしまっています。
仕事を指導し、人事評価する中間管理職であっても、きちんとした成果を出せないので、いかに部下を管理しているかだけを見せ合うようなことになり、部下の有休消化率や残業時間でやる気あるように見せることになっています。

長く企業で働いてきて、部下も上司も経験してきましたので、このような指摘はまったくその通りとうなずけます。そして、このままでは駄目と言う点についても完全に同意できます。以前勤めていた某企業は大手に吸収合併され、その後内部での不正横行が明らかになり、ほとんど実体がなくなってしまいました。以前、偉そうなことを言って業務管理をやらせていた首脳陣の顔を見てみたい気持ちです。

本当にやるべき管理術を太田先生が提示しています。片手間のように見える管理ということです。また、カーリングのスイーパー(氷の表面を掃いて誘導する)にたとえています。いずれもその通りと感じます。