爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ISO崩壊」山田明歩著

ISOの関係者ではなく、経営コンサルタントの山田明歩さんが2003年にISOの先行きについて書き、当時は結構話題になった内容です。
特におかしな風潮として、自治体のISO14000取得の流行と公共事業入札の関係で建設業者のISO認証取得の半義務化について、批判されています。
市町村などのISO認証は一時本当に流行しましたが、この本の記述によれば環境ISOといっても取得範囲を制限しており、大抵のところでは本当に必要な清掃工場や排水処理施設などは除外して役所の事務所だけに限定しており、結局コピー用紙の削減とか電力削減などの小学校の生徒会でやるような陳腐な活動だけになっており、うちもやりましたというポーズだけのところがほとんどだったようです。しかもその認証のためにコンサルタント費用や審査料など、数百万円以上の税金を費やしているところが多く、住民があまり事情を知らないがために許されているだけのものだったようです。
本当に環境問題を考えるのであれば、形だけのISO認証などという無駄金を使うものはやらずに、住民とNPOを巻き込んだ自主的な活動をする方がよほど身がある成果を出せるという指摘で、まったくごもっともな話です。

もう一つの、公共工事入札のための建設企業のISO認証取得もその原因のひとつは発注側の県や市町村に問題があります。そもそも発注側がISOを取得していることは少なく、単に入札参加の資格に使っているだけなのでその意味も良く分かっていません。したがって企業側としても形だけ認証されていれば良いということで内容はまったく問わないという姿勢になります。

このような実態ではいずれISO認証取得企業も激減しISOは崩壊するだろうという著者の予測ですが、それから10年が過ぎた今、かなりそういう傾向に近くなっているのではないかと思います。