ODA(政府開発援助)に対しては、様々な批判もありますが徐々に縮小されながらも続いています。
ただし、その実像については誤解もあるかもしれません。
東工大名誉教授の渡辺さん、日本総研研究員の三浦さんが解説をしていますが、2003年出版ということで現在とはかなり状況も違っているところがあるかもしれません。
ODA政府開発援助とはどのようなものか。
OECDの開発援助委員会の定義によれば、
1、政府ないし政府機関によって供与される資金であること
2、開発途上国の経済開発や福祉向上への寄与を目的として供与される資金であること
3、資金の返済が開発途上国にとって重い負担とならないよう、グランド・エレメントが25%以上の資金であること
となっています。
グランドエレメントとは、援助条件の緩やかさを示す指標であり、商業条件の借款(金利10%以上)でGE=0%、完全な贈与でGE=100%となります。
日本のODAは、1951年のサンフランシスコ講和条約で決まった、東南アジア諸国への賠償や無償援助供与から始まりました。
それは賠償とは言え、各国との賠償協定の中で受け取り国の経済発展と社会福祉に寄与することが決められていたためです。
ただし、当時は円借款には日本からの資材や機材の調達を条件として含む「ひもつき」(タイド)援助で、それが日本の輸出促進にあたる性格を持っていました。
日本の従来のODAの特徴として、1、借款が多いこと、2、インフラ建設が主であること、3、対象地域として東アジアが多いこと、があります。
2000年においても、オーストラリア、カナダ、オランダは贈与のみであり、アメリカ、フランス、ドイツなどでも贈与の比率が高いものですが、日本は借款が多くなっています。
とはいえ、後発開発途上国向けだけに限れば日本も贈与比率が高くなります。
日本のODAの理念として、「自助努力」と「要請主義」が掲げられています。
あくまでも受け取り国側の自主的な成長への努力を、その国からの要請に従って援助するというものであり、アメリカのように相手国側に押し付けるような姿勢で内政干渉にもなりかねないものとは異なります。
しかし、日本も財政悪化するに伴いODAに対する批判も強まっています。
その批判の論点は次のようなものです。
大規模開発に伴う環境破壊や住民の強制移転がある。
ODA資金が日本企業に還流されている。
贈与比率が低く借款が多いのが問題。
明確な理念がない。
米国従属であり独自の戦略がない。
こういった批判には誤解や曲解も含まれているようです。
インドネシアのスマトラ島に日本からのODA資金によりダムが建設され、電力供給が安定化されたものの建設地の住民が強制退去させられたり、環境悪化が進んだという問題もありました。
インドネシア政府は移転補償金を払うとしていましたが、未払いも多かったようです。
そのような現地政府の問題もありますが、その地域の電化率を大きく上昇させ、経済成長の支援となりました。
ODAだけが悪いわけではないとは言えるようです。
ODAによる事業の資材機材を日本からのもののみとした「ひもつき援助」というものは、かつては多数存在していました。
しかし、現在ではひもつき(タイド)が条件の援助はほとんどなく、2001年のアンタイド比率は81%となりOECD平均よりも高くなっています。
国際入札が原則とされ、日本企業の受注率は2割程度となっています。
ODAで借款が良いか贈与が良いかと言う問題は簡単なものではありません。
サブサハラ・アフリカなどの後発開発途上国では贈与が多いのですが、それが相手国側の開発意欲につながらず、いつまでたっても成長できないという現実があります。
日本が借款を多く供与していた東南アジア諸国はそれを触媒として成長に活かしているという見方もできます。
最後には中国に対する援助の問題が書かれています。
出版当時にはまだかなりの額の対中ODAが供与され、すでに成長段階に入った中国に対してそのようなものは必要ないと言う意識が増えてきました。
結局、それが停止されたのはごく最近になってからですので、やはり簡単に止めると言うのも難しいことだったのでしょう。
今では中国が各国に資金を供与すると言う情勢になってきました。
あっという間ですが変化は大きいものです。