爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「明治・父・アメリカ」星新一著

SF作家として有名な星新一さんが父上の星一の誕生から遊学、そしてアメリカ留学し大学卒業して事業展開まで十分に行った後帰国するまでを描いた伝記です。
星一については、星製薬および星薬科大学を立ち上げ、その後政府との軋轢で苦戦したことに関しては、有名かと思いますが、その立身出世に関する物語も相当なものです。
明治初年に福島県で産まれた星一は無一文で学業を志し、東京に出て自ら学費を稼ぎながら学校に通い、さらにアメリカ渡航を果たすもののアメリカでも苦労の末に大学を卒業しさらに事業を起こしてある程度の地位を得ました。
その努力はかなりのものですが、やはり何かを始めるとすぐに周りの目を引くというのは相当な才能の持ち主だったようです。

本書の範囲からはずれますが、年譜を参考にしてみると日本帰国後ドイツの科学者の後援にも力をいれ、会社の業績が悪化してからも送金を続けたとあります。その科学者の中にハーバー(アンモニア合成法でノーベル賞受賞)もいたということで、意外なつながりに驚きました。

自分の父親の伝記を書くということは難しいことだろうと思いますが、それをここまで完成させた著者の力量もさすがです。