東京農業大学名誉教授の小泉武夫さんが、食に関するあれこれで世界遺産といっても良いというものを列挙したものです。
小泉先生は日本だけでなく世界各国のさまざまな食品について研究をしてこられましたが、その中でやはり日本の食品は様々な面からみて世界遺産といっても良いという主張です。
日本の食品について、食材、調理法のいずれでも技術と工夫が積み重ねられており、特に著者の専門分野である発酵食品などでは世界の他国よりはるかに高い技術力で作られているということは明らかです。
最初に紹介されているのは石川県で作られているフグの卵巣の糠漬けですが、猛毒で避けられている食材をなんとしても食べてやるという執念の塊のような食品です。まだ全貌が解明されているわけではないようですが、事実上まったく問題ないレベルまで解毒されているというのはすごいものです。しかし、昔から製造法が確立するまでにはかなりの人が亡くなったのではないかと思いますが。
有名な話ですが、パスツールが確立されたと言われている低温殺菌法もその数百年前から日本では酒の火入れとして実施されています。これも正確に評価されていくべきものでしょう。
しかし、この本の中でも触れられているように、これらの様々な世界遺産と言うべきものがどんどんと失われていっています。そのような時だからこそそれらの価値を強調していく必要はあるのでしょう。古臭い食品などといって避けられることはあってはなりません。