誰もがスマホを持つ時代となり、ネットのセキュリティーが大きな問題となっています。
著者の一田さんはネットセキュリティ関連の仕事を続けてこられ、その後著述業としてネットの安全について分かりやすく説明しています。
ネット詐欺、サイバー犯罪、こういった事件が日々報道されていますが、これらは自分には関係ないなどと言うことはありません。
いつ巻き込まれるか、あるいは家族が犯罪を犯してしまうことすら無いとは言えません。
さらにスマホやパソコンだけでなく家庭内の様々な機器までネット接続されています。
こういったことに完全に対策をすることは不可能です。
しかしどういった事件が起きているかということを知り、もしもの時には少しでも被害を減らすということは考えていなければならないのでしょう。
ネット犯罪が起きた時には警察は捜査を行います。
しかしインターネットというものは誰かが全体の安全管理をしているなどと言うことはありません。
日本だけがそうなのではなく、世界のどこにもそのような組織はありません。
そのような状況なので、「自分の身は自分で守る」「最新の情報をチェックする」「あらゆるものを疑ってかかる」といった意識を持つ必要があります。
基本的な防御として次のことが挙げられています。
「利用しているソフトは常にアップデートする」「アンチウイルスソフトを使い、更新する」「利用しているソフトの自動更新のために一日に数時間はネットに接続する」「デフォルトのパスワードは必ず変更する」「パスワード管理は適切に行う」「怪しいサイト、サービスは利用しない」「メールに添付されているファイルはできるだけ開かない」「スマホは防御が甘いのでネットバンキングなどの重要な処理は行わない」「いざという時に相談できる知り合いを複数もつ」「過去に問題を指摘された製品の利用は控える」
全部しっかりやっているかと考えると抜けているところがありそうです。
サイバー犯罪の被害を受けないために注意することが必要ですが、場合によっては家族などが犯罪を犯してしまうことすら無いとは言えません。
万引きなどと比べてもやりやすいのがサイバー犯罪です。
子どもが安易に手を出すこともないとは言えません。
パスワードには問題が多いとして、生体認証を取り入れるところが増えています。
しかし、著者はこれには非常に強く危険性を指摘しています。
生体認証の最大の問題点は「変更できない」ことです。
指紋や顔はどうやっても変更できません。変更できないものに重大な事項を託すというのはどう考えても危険だということです。
他にも様々な問題点があり、生体認証を進めているような企業や団体は疑ってかかることが必要とのことです。
今の時代はこういったネットの危険性がさらに増大していくばかりで、混乱はさらに広がるという見通しです。
いずれは新たな秩序が生まれるかもしれませんし、その方向での努力が必要ですが、少なくとも現在はできるだけ被害を被らないように注意するしかありません。
なお、章ごとにテーマに沿った短い物語が添えられていますが、そこでの犯罪者の名前がすべて「加賀谷籐子」さん。身近な人たちの情報を盗み取り金を引き出すという描写ですが、無いとは言えない人名で大丈夫でしょうか。著者はよほどこの名の人に恨みでも?