ネットを通じての犯罪に子どもが巻き込まれるという事例が急増していますが、またSNSなどで子ども自身が他を傷つけるような加害者になるということも起きています。
こういったことに子どもが関わることを防ぐにはどうしたらよいのか、埼玉県警でデジタル捜査を経験しその後はネット犯罪防止のアドバイザーとして活躍している著者が様々な事例をあげて警鐘を鳴らします。
なお、本書のほとんどは小中学生などの子どもを持つ親への対処の説明ですが、大人であってもネット社会の危険性対応がまったく不十分であるということで、それについての記述もあります。
私にとってはそちらの方が参考になることが多かったのでその点の紹介から始めます。
スマホを落とした(無くした)場合にどうするか。
もうほとんどの人が「スマホの位置情報からスマホを探す」という行動に出るようです。
しかし、まず最初にやらなければならないのが「緊急に利用停止の手続きを行なう」ことだということは、おそらくほぼ誰も知らないということです。
「落とした」のではなく「盗まれた」のならばより緊急性が高まります。
画面ロックなどをしていても犯罪者はすぐに解除してしまい、スマホを自由に操るだけでなくカード情報、支払情報なども盗まれる恐れがあります。
こういった「緊急連絡先」も知っていますかと聞かれると知っていると答える人が多いのですが、「それはスマホに入れてある」というのがほとんどです。
そのスマホが無くなった(盗まれた)ならどうしようもありません。
著者がアンケート調査をしたところ、きちんとメモしてあった人は6%だけだったそうです。
なお、スマホを持ち歩く際には最低限「画面ロック」をしておくのが当然なのですが、昨今よく見かける「歩きスマホ」の場合は当然ながらロックも解除されているはずです。
著者の推測では今後流行するのが「スマホのかっぱらい事件」だということです。
歩きスマホなどをする連中はほとんど周囲には注意を向けていません。
そのような無防備な人間が金のなる木とも言えるスマホをこれ見よがしに持ち歩いている。
犯罪者にとってはいいカモがフラフラ歩いているようなものです。
それでは本題の「子どものネット犯罪」ですが、非常に多くの事例が取り上げられていますのでわずかしか紹介できません。
とにかく、子どもは人生経験もわずかなものでその警戒心も未発達です。
それが犯罪者たちの前にほぼ無防備なまま放り出されるようなものであり、親は何でもダメというのではなく何をしたら危ないのかということをきちんと教え込む必要があるということです。
SNSに色々な写真をアップするということは子どもでも頻繁に行っています。
しかし、例えば「電車がストップして学校に遅れる」なんて言う内容を写真付きであげたら、「どこの電車を」「何時ごろ利用し」ているかということを公表しているようなものです。
通学時間というものはほぼ毎日一定ですので、ストーカー行為もたやすくできることになります。
他にも「自宅から見た写真」とか「近所の店舗」などと言う写真からも自宅の特定は容易です。
SNSで誹謗中傷をしてしまうということは、子どもであっても加害者として扱われることになります。
しかしやっている本人には罪の意識はほとんど無いことが普通です。
誹謗中傷を書き込むだけでなく、いいね!やリツイートをするだけでも罪に問われることもあります。
誹謗中傷をする人というのは、正義感は持っているのでしょうがそれが誤ったものです。さらにこうすればどうなるかという想像力も乏しいようです。
また間違った承認欲求つまりそれにより周囲から評価や共感をされたいという思いが強いようです。
親ならどうやって対処するのか。
子どものスマホの使い方に細かく干渉するのは逆効果で反発を招きそうです。
しかし放っておいて事件に巻き込まれるわけにはいきません。
子どもの行動を見て、「どのような動画を見て笑っているか」を観察することも重要だということです。
コンビニなどの店内で不潔な行動をする動画を拡散するというのが騒ぎになったこともあります。
こういった動画は普通の大人は受け入れられませんが、子どもの中には見て笑う者もいます。
自分の子どもがこのような不道徳を見て笑うのかどうか、それを見ていると子どもの道徳心が偏っていることが分かることもあるそうです。
ただし、いくら危険であるからといってもはやスマホやネットから子どもを遠ざけることはできません。
やはり適切な使い方、何をしたら危険なのか、そういったことを親と話し合うような関係を作っていくことが重要なようです。