爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「男性の育休」小室淑恵、天野妙著

男性も育児休業を取るという社会の動きがあります。

共働きの夫婦が大多数を占めていますが、子どもが産まれた後に育児のために休業する育児休業制度を利用する女性は多いものの、まだ父親である男性が育児休業を取るということは少ないままです。

その理由としてはまだまだ社会の雰囲気としてそれを許さないものがあるのでしょう。

また制度としては存在していてもその中身がほとんど知られていないために誤解されていることも多いようです。

 

もっと知識を持てば男性の育休取得も進むかもと言うことで、その方面で活躍している著者のお二人が男性育休に関して様々な方向から説明しています。

なお、著者の一人天野さんはご自身も3回出産したものの、夫は育休を取ることなど全く不可能で、乳児の子育ては一人で悪戦苦闘したという経験をお持ちで、それもこの活動に入った理由になっています。

 

日本の少子化は加速するばかりですが、その理由の一つが母親が一人で子育てに追い込まれてしまっている状況にあるからです。

かつてのように祖母の助けがある家庭というのはほとんどなくなりました。

しかし重要な子育ての担い手であるはずの父親、夫の助けがほとんど得られないということが出産をためらわせる理由となっています。

そして実際には現在の若い夫たちはかなりの割合で育児をしたいと考えています。

しかしまだ男性の育休取得には高いハードルがあるため実行できないであきらめる場合が多いようです。

 

男性育休に関しては多くの誤解があります。

育休の間は無給となるために暮らしていけない、男が休んでも何もできない、共働きの家庭でないと男性育休は取れない、中小企業にはそういった制度がない、休むと仕事が回らず、会社に迷惑がかかる等々。

その多くは誤解に過ぎないのですが、その誤解を解こうともせずにいるのも社会の一面です。

 

自分が休むと職場の仕事が回らなくなるという思いは多くの人が持つのですが、実際にはそのように「誰かがいないと回らない職場」というのは非常に問題が大きいものです。

育休でなくてもその人が急に仕事ができなくなる事態はいくらでもあり得ます。

そのたびにストップするような職場は危険極まりないものです。

そのような属人主義を退治するためにも男性育休というものを上手に使って職場改革を進めるべきです。

 

先進的な企業では法律で決められた以上の対策を取り男性育休を後押しするところもありますが、そういった企業の方が社員採用もやりやすく、また育休を取った人も周りの人も仕事に対する気構えが違ってきて、さらに会社に対する感謝の念もあるのか仕事の取り組み方が違ってくるということです。

 

なおそうはいってもまだ育休を取るとボーナスに響くとか、昇進しづらくなるといった企業が多いのは事実です。

ただしそれは制度上の問題であり改正していくべきものです。

それを取り組むべきものだという観念を皆に広げることも重要です。

 

さらに進めるためにはまだまだ色々な法律で義務化していく必要があります。

それで会社の競争力が落ちると考える人もいますが、逆にそれで社員の働きやすさが得られるということがあります。

それが進むように社会全体で後押しする必要があるということです。

 

私は男性育休などと言うことは夢にも考えなかった世代ですが、やはりこれを進める必要はあるのでしょう。

私の子どもたちも今乳幼児を育てている最中ですが、やはり父親の育児参加は難しいようです。

こういったことが当たり前となるにはまだまだ長い時間がかかりそうです。