小説家の三浦しをんさんはお名前は知ってはいてもその作品は読んだことがありませんでした。
しかしキャリアは長い?せいか、コバルト短編小説新人賞という文学賞の選考委員を任せられ何年も勤めていたそうです。
それで候補作を読んでいるとなかなかの渾身の作品が多いのですが、それでも同じような欠点が多くの作品に見られ、そのせいで評価も下がるという残念な例がよくあるそうです。
そういったことに気を遣えばもっと良い作品になるのではないか。
それがこの本を書いた理由だそうです。
レストランのフルコースの仕立てを真似た構成で、全二十四皿、まあ24章ということですが、なかなかくだけた語り口で読みやすく書かれています。
最初は「とにかく念入りに推敲しろ」という当然の指摘から始まり、一人称と三人称のどちらを選ぶかとか、書き方で「一行空き」の多用がどうといった形式も重要な点ということです。
セリフの書き方というのは言われてみればそうかなと納得するものでした。
現実の人の会話というものは、かなり省略されて話されており、それをそのまま小説のセリフとしたら読んだ人は全く理解できません。
だからと言って、説明的なセリフも自然なものとはいえずぎこちなさが目立つものとなってしまいます。
その辺をうまく処理するのが小説家として高度なテクニックだそうです。
セリフがパッと出てきても、「誰のセリフか分からない」という小説が多く、そこで読者が迷ってしまうのです。
それを避けるために「おはよう、朝飯食べる?とAは言った。いらないとBは言った」という、「と○○は言った、戦法」と名付けられた小説作法があるのですが、これもぎこちなく見えてしまいます。
そこがうまいのが藤沢周平ということで、「セリフ」Aは・・・(地の文)が基本のところ、時々ここぞというところで「セリフ」とAは言った。という構文を入れてくるということです。
他にも「書く際の姿勢について」とか「プロデビュー後について」といったところまで解説してあり、まあ小説家になろうとしている人には参考になるかもしれません。