爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「文体の舵をとれ ル=グウィンの小説教室」アーシュラ・K・ル=グウィン著

アーシュラ・K・ル=グウィンと言えば「ゲド戦記」や「闇の左手」などのSF小説の作者として知られ、ヒューゴー賞やネピュラ賞といったSF小説界の有名な文学賞をいくつも受賞しています。

一方で「文章の書き方」というものを教えるという活動にも力を入れていたそうで、物語作家を目指す人たち向けの講習会といったものを開催しており、この本の内容もその講義内容をまとめたものだそうです。

 

もちろん、「英語で書いていた作家のル=グウィン」が「英語で物語を書こうという生徒たち」に「英語」で講義をした内容ですので、それを日本語に翻訳して本にする意味がどれほどあるのか、正確には分かりかねますが、細かい点では合わないことがあっても、深いところでは言語の差を越えて共通するものがあるのかもしれません。

 

そんなわけで、第1章の「文のひびき」といったところは日本語にも通じるかもしれませんが、それ以降、「句読点」や「形容詞と副詞」「動詞の人称と時制」などと進むとあまり参考にはならないかもしれません。

 

各章は著者の説明の後に練習問題まで出されており、その内容は訳者の大久保さんが日本語にふさわしいようにかなり組みかえたようで、そのまま使えるようになっています。

なお、ル=グウィンの文章作成の講義で数名の受講者に対して使われたということで、受講者同士の討論ということも考えられており、それがあった方が効果的なのかもしれません。

 

英語の文章では「同じ語を繰り返し使うこと」はどうやら避けられているようだということは感じていましたが、実際にそういったことを言ったり書いたりしている人がいるようです。

ル=グウィンは「それはみょうちきりんで勝手なルールだ」と批判していますが、実際に文章を書く時に類語辞典を引きながら次々と言葉を変えていくということが行われているようです。

確かに何も考えずに同じ言葉を繰り返すのは子どもが書く文章のようで幼稚に見えることもありますが、繰り返さなければ書けない場合もあり、言葉を変えると不正確になる場合もあり、よく考えて使わなければならないということです。

 

まあ文章の書き方については少しいい加減なところがある私ですので、参考にした方が良いのかもしれません。