爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「巨石 イギリス・アイルランドの古代を歩く」山田英春著

イギリスには有名なストーンヘンジという巨石が並べられた遺跡があるということは知っている人も多いでしょうが、その詳細はあまり知られていないことでしょう。

巨石が円形に並べられたストーンサークルと言われるものだけでも、ブリテン島だけで1000以上、円形には並べられていないものの単独や直列に並べられた巨石は数千もあるということです。

 

そのような巨石を並べた巨石文化とも言えるものが、ヨーロッパでは紀元前4000年代から数千年続きました。

その範囲も北欧から地中海までと広いのですが、中でもブリテン島やアイルランドには特に多数のものが集中して残っているようです。

それを作った人々がどのような人なのか、諸説あるようですがあまりよく分かっていません。

後の世の伝説では巨人や悪魔が作ったとか言われたこともあり、またその後はケルト人やブリトン人が作ったともされたこともあったのですが、それも時代が異なるようです。

 

この本ではそういった学説を解説したり検証したりという方向ではなく、あくまでも著者の山田さんが実際にイギリス各地の巨石遺跡を訪れ、その写真を撮影してきたというもので、その風景は心惹かれるものとなっています。

 

巨石の遺跡の中でももっとも名高いストーンヘンジは、ロンドンから西へ130㎞、ソールズベリー平原という白亜質の台地に存在します。

あまりにも有名になりすぎ、観光客が殺到し遺跡を傷つけるという事件もあったために現在では警備も厳しく見学も制限されているようです。

 

その石の大きさは、巨石で有名なエイヴベリーの遺跡のものには及びませんが、それでも巨大な岩が規則的に並んでいるのは壮観です。

これがいつ頃作られたかということも諸説あるようですが、一度に作られたものではなく、紀元前3000年頃から1000年以上もかけて徐々に作られていったようです。

規則的に並んでいることから天体観測のために作られたかという説もあったようですが、やはり何らかの宗教的な儀式を行ったようです。

なお、この中でも大きな高さ2m以上の石柱を馬蹄形に並べたものに使われている岩は南西ウェールズのプレセリ山地で産するもので、ここからは350㎞も離れています。

そのように長い距離を舟などを用いて運んだようですが、なぜそこまでしなければならなかったのか、理由は全く分かりません。

 

巨石が並べられた時代よりはるか後になってイギリスにやってきた人々から見ればこれらの遺跡は悪魔の作ったようなものに見え、いろいろな伝説が作られました。

神の教えに逆らった人々がその怒りによって石に変えられたといった話が多いようです。

各地にそういった伝説が残っており、それは地方によって少し色合いが違ったものもあるようです。

 

遺跡が多いのはブリテン島でも西部のウェールズ地方ですが、スコットランドアイルランド島にも巨石は残っています。

それでもやはり地方差はあるようで、写真から受けたイメージだけみればやはりスコットランドなどは素朴なものに見えなくもありません。

 

すべての遺跡の写真が掲載されているわけではないので、あくまでも見ることができる遺跡の写真だけのイメージですが、建物が一緒に写っているものはほとんど無く、草原の中に立っているものが多いようです。

その点、住宅地の真ん中にもあることがある日本の古墳などとは違うようです。

それだけ人口密度が日本とは違うということでしょうか。

なお、迷信のためかキリスト教の信者が巨石遺跡を破壊するという行為もかなり多く、かつて存在した遺跡の多くが破壊されてしまったようです。

今は保護されているのでしょうが、実際にはもっと多かったのでしょう。