爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「文系のために東大の先生が教える バイアスの心理学」植田一弘監修

バイアスとは偏りや先入観という意味ですが、心理学的には「認知バイアス」というように使い認識のゆがみのために合理的な判断ができないことを指します。

 

この本ではあまり科学的な思考が得意ではない?文系の人のために分かりやすくバイアスというものを説明するという体裁になっており、ざっと意味を掴んでいけることを目指しています。

 

心理学では認知バイアスについては多くの実験を通した仮説提唱がなされており、様々な名前のついたバイアスが知られています。

確証バイアス、権威バイアス、自己中心性バイアス、正常性バイアス等々。

効果と名前の付いた現象も数々あり、サンクコスト効果、スポットライト効果、バーナム効果バンドワゴン効果など、こちらもかなり有名なものが含まれています。

 

この本ではそういったものをさらっと紹介しており、なんとなく分かったような気分になれるかもしれません。

もちろん、しっかりと理解するにはもう少し詳しい解説をされた本に進む必要があるのでしょうが。

 

アメリカのメルビン・ラーナーという心理学者が1960年代に理論化したのが「公正世界仮説」というものでした。

「良いことをしたら報われ、悪いことをしたら罰を受ける」という、当然のように感じられるものですが、自分に起きることをそう考えて頑張って解決するモチベーションにするだけなら良いのですが、一歩間違えて他人に起きたことをこれで判断しようとすると大変なことになります。

「そんな目にあったのは被害者側にも落ち度があるからだ」といった声はよく聞かれるものです。

それを確かめるためにラーナーが実施した実験があの有名な「電気ショックを受ける犠牲者」というものです。

そこでは解答を間違えた犠牲者は電気ショックを受けると知らされた実験参加者は犠牲者に対する評価を低くする傾向、すなわち電気ショックを受けても当然と考える傾向があったそうです。

これも世界は公正にできているという信念があるためです。

 

こういった仮説は現代でも続々と生まれています。

インターネットですぐに検索できる情報や、デジタル機器に保存しておいてすぐに取り出せる情報は、頭の中に記憶されにくいということがベッツィー・スパロウらによって報告されました。

これを、グーグル効果とかデジタル性健忘と呼ぶそうです。

 

報道は「偏向している」と考える人がいます。

そして「自分だけは偏向報道には左右されない」と信じる人もいます。

自分と同じ立場から報道されているニュースなどを見て「中立的な報道である」とみなす一方で、真に中立的な報道を見ると「この報道は偏っている」と考えることを、絶対的メディア認知と呼ぶそうです。

このように「自分は現実を客観的に見ることができる」という信念を持つことを、ナイーブ・リアリズムと呼びます。

また自分以外の世間一般の他者はマスメディアに強く影響されていると考えるのが、第三者効果ということです。

 

自分でもできるだけ偏らない見方をしようと思い、またバイアスということも意識していようと思いますが、先年の熊本地震の時でも「それほど大した揺れじゃない」と考える「正常性バイアス」に陥ったように感じます。

気を付けなければ。

やはり常にこういった問題を自覚していくことが必要なのでしょう。