爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「超圧縮地球生物全史」ヘンリー・ジー著

訳者あとがきに翻訳者の竹内薫さんが書いているように、「最初に原書を手にした時にずいぶんと無謀な試みだなと驚いた。なにしろ38億年にわたる地球生命の誕生から絶滅(?)までをわずか200ページ(原著)で書くのだから」

という本です。

 

地球誕生の直後とも言える時期に生物も誕生しましたが、その後紆余曲折、何度も絶滅の危機を乗り切りながら進化を続けた様子が目の前に展開するように思える?

 

なお、訳者あとがきには本書を読むうえで記憶しておくべきことも並べられています。

地球生命を語る時には、酸素・二酸化炭素、大陸の移動や氷河の分布そして海流。さらに太陽の周りをまわる公転軌道や地球の地軸の歳差運動にも気を配る必要があること。

さらに5回の大量絶滅も配慮しつつ見ていく必要があります。

 

とにかく生命の全史について万遍なく語られていますので、その目くるめくような流れは読んでもらわなければ分からないかもしれません。

 

大量絶滅にはいろいろな原因がありましたが、もっとも激しかったのがペルム紀末期のものかもしれません。

その時には何百万年もかけて上昇してきたマントル・ブルーム(流動化したマグマの流れ)が地殻と接触しそれを溶かしてしまいました。

現在の中国から広がりあふれ出す溶岩と有害なガスが温室効果を高め、海を酸性にし、オゾン層を破壊して紫外線に対する地球のシールドを低下させました。

さらにその500万年後にはより範囲も量も大きなマントル・ブルームが西シベリアに噴出し現在のアメリカ大陸の大きさに等しいほどの地域を厚さ数千メートルの玄武岩で覆い尽くし、それによって発生した灰、煙、ガスが地球上のほぼすべての生物を絶滅させました。

その中で生き残ったわずかな種が海中のクラライアという二枚貝でした。

彼らが爆発的に増殖し生物の消えた世界を埋め尽くしたのです。

 

ヒトはかなり社会性が強い生物であり、夫婦と子供だけの単位ではなくより拡大した集団での生活を送ります。

鳥類や哺乳類の多くの種は夫婦だけで子どもを育て、あまり他のつがいと共同することはありませんが、ヒトの場合はそれが顕著です。

その理由の一つが、「不倫が多いから」だそうです。

ある子どもの父親が誰かはっきりしない場合、その可能性がある男は皆協力していくのだとか。

ホモ・サピエンスに進化して以降、ヒトの子育てには祖母の協力も加わりました。

これは他の動物には全く見られないもので、ホモサピエンスの特徴とも言えます。

このおかげでより手間のかかるようになった人の乳児の哺育が何とかできるようになりました。

 

生物全史ですので、現在圧倒的に繁栄しているホモサピエンスの絶滅の可能性についても語られています。

いくら現在その人口が莫大になっていても、必ず種の消滅は起きるはずです。

人類が大量に存在したという期間は地球全史からみれば非常に短い期間でしかなく、数千万年、数億年も後の時代になればその痕跡もほとんど残らないでしょう。

その原因は何かは特定はできませんが、やはりこれほどまでに人口が急増するということ自体が引き金を引きそうです。

 

30億年におよぶ生命の旅、まだ終わってはいませんが、その全史を眺めることは人間の意識というものに大きな変化を及ぼすかもしれません。