爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「介子推」宮城谷昌光著

小説はあまり読まないのですが、ひさしぶりに宮城谷作品です。

 

内容についてあまり細かく書くとネタバレになりますので、話の背景だけにしておきます。

 

時代は中国古代の周王朝の後半、王朝の威厳は衰え諸侯の国がそれぞれ勢力を競っていた頃です。

中原北部にあった、晋という国に重耳という公子がいました。(まだ「王」を名乗っていないので、国の主が「公」です。その子供で「公子」)

紀元前7世紀頃の話で、まだ春秋時代の前期と言える時代です。

 

二番目の息子だったのですが、父親が新たに迎えた後妻にのめり込み、その子供に国を継がせようと望みます。

難癖をつけて年上の息子たちを殺そうとし、嫡男は死んでしまいますが、重耳やその弟は逃れて国外に潜みます。

 

それらの公子の元には、多くの人が集まり配下となって仕えることになります。

その中に介子推もいました。

 

その後、重耳には刺客が襲いかかったということもあり、逃れて各国をめぐります。

このあたりの事情については、宮城谷さんは別に「重耳」という作品も書いており、そちらが詳しいのですが、本書はあくまでもそこに随従している介子推を主人公として書かれています。

 

当時の中原の覇者、斉の桓公に仕えるところなどもハイライト、そして楚の国や秦の国を訪れ、最後は秦のバックアップで晋に帰国し国主となることになります。

 

しかし、その長い放浪に付き従った多くの配下たちは、帰国したあと高位につけるわけではありませんでした。

介子推はそれを嫌い役人を辞めて隠棲することになり、それを後から知った重耳(晋文公)は後悔するということになります。

 

介子推については、史記を始めとした史書にも描かれており、有名な人物ですが、その詳細は知られていません。

本書の中では棒術の名手だがそのことは人に知られていないことになっていますが、それが事実かどうかは分かりません。

しかし、その姿が鮮やかに想像できるのは、宮城谷さんの筆力なのでしょう。

 

介子推 (講談社文庫)

介子推 (講談社文庫)