有機フッ素化合物PFOS・PFOAといったものが飲料水から検出されるといった事態が全国各地で報告され、問題視されています。
これは海外でも大きな問題となっており、特にEUでは規制強化の方向にあるようです。
ただし、PFOS・PFOAだけでなく他の有機フッ素化合物PFASにまで規制を広げるという動きが強まりそうですが、多くのフッ素化合物は現代社会にとって非常に重要な役割を果たしており、それが規制されると多大な影響が心配されます。
こういった状況について、リスク学者永井孝志さんがブログで連載しています。
まずはPFOS・PFOAの規制基準値について。
nagaitakashi.netまず物質名について、PFOSとは「ペルフルオロアルキル化合物」と「ポリフルオロアルキル化合物」の総称であり、PFOAとはその関連化合物で分解されPFOSになるものだそうです。
これらの規制値は2020年の時点で日本の水道水の基準値、合算して50ng/mlが世界一厳しいものだったのですが、その後アメリカがそれより一桁低い規制値を定めました。
これはアメリカでの研究でPFOS等が血中に含まれていた場合ジフテリアワクチン接種による抗体価の増加が低下するという効果があったためだそうです。
これを受け日本でも規制値をどうするか検討中のようです。
ただし、PFOS・PFOAはすでに世界中で新たな製造は禁止されており、これ以上増えることはありません。
その中で規制値を厳しくするということはどういうことか。
このような状況の中、欧州ではさらに有機フッ素化合物まで規制しようという動きが強まっているというのがその2です。
nagaitakashi.net日本の場合では今騒がれている水道水への混入と言った事態はほぼPFOS・PFOAに関するものだけなのですが、この報道の際には「PFAS」すなわち有機フッ素化合物全体の名称が使われることが多いようです。
欧州では有害性が明らかになったPFOS・PFASの規制ばかりでなく、「予防原則」に基づいて
「PFAS」すなわち有機フッ素化合物全体にまで規制を広げようとしています。
そして、PFASに「フッ素樹脂」まで含めてしまっていることが大問題となります。
フッ素樹脂は現代の社会の隅々にまで行き渡っており、これを禁止してしまえば大変な影響が出るでしょう。
それがどのくらい社会に広がっているのかを示したのがその3です。
nagaitakashi.netフッ素樹脂には以下のような優れた性質があります。
1.熱や紫外線に対して強い(耐熱性、耐候性、耐薬品性)
2.水も油も両方はじく(撥水撥油性、滑り性)
3.電気を通さない(絶縁性)
これらの性質を活かし多くの場面で使われています。
自動車エンジン部品、消防用保護具のコーティング、化学プラント半導体製造の装置、建築資材、屋根、太陽光発電パネル、農業用ハウス、医療用分野の手術着・血液バッグ・人工血管・カテーテル、薬包フィルム、電子機器のコーティング、機械関係のギアやベアリングの摩擦軽減、電子機器のケーブルや電線の被覆材・プリント基板。
これらが使えなくなったら大変な状況になります。
最大12年の猶予期間を設けその間に代替品を開発させるということのようですが、その代替品の方がリスクが大きいということもよくある話です。
PFOSが危ないというニュースがあちこちで流れている間に、なんとなくPFASまで禁止しろなどと言う乱暴なことにならないよう、監視していく必要がありそうです。