植物は我々の生活に深く関わっています。
いろいろな植物がありますが、それについて知らないことも多いようです。
この本では植物学者でBBCの番組制作にも携わったことのあるドローリ氏が世界各国の国ごとにいくつかの植物を選び、そのエピソードを1‐2ページで書いています。
なお、各ページにはその植物の写真ではなく、精密なイラストが描かれています。
これはフランス人イラストレーターのルシール・クレールさんが描いており、それも魅力の一つとなっています。
各国それぞれにまつわる植物といっても、原産地は別というものも多く紹介されており、カカオはコートジボワールで紹介されていますがもちろんその原産地はエクアドル付近とみられています。
しかし現在では世界の40%をコートジボワールで生産されているということですので、ここで触れるのが妥当なのでしょう。
日本の項で紹介されているのは、スサビノリ、キク、イチョウの3種でした。
まあ妥当な選択かもしれません。
キクのページのイラストには、花の絵と共に菊人形も描かれていました。
ダイズは中国のページで紹介されていましたが、ダイズは東アジア原産でおよそ5000年前には中国東北部で栽培が始まり、紀元100年頃までには東アジア一帯で栽培されるようになりました。
それらの地域では多くの食品に加工され食べられていますが、それ以外の世界の国々、特に西洋に到達したのはようやく18世紀になってからのことでした。
それが今では米国、ブラジル、アルゼンチンなどで非常に多く生産されるようになり、今後はさらに広がると見られています。
タンパク質と油脂を多く含むため、肉食に代わる可能性もあります。
トマトは新大陸からもたらされましたが、その名はマヤ人のつけた「トマトゥル」から来ました。
これは「膨らんだもの」という意味でした。
その名をスペイン人はそのまま使って「tomate(トマーテ)」と呼んだのですが、イタリア人は少し違いました。
彼らは外来品はすべて「Moorisy」すなわち「ムーア人の」を付けて呼ぶ習性があり、トマトも「pomo di moro」(ムーア人の果物)と呼ばれました。
それをフランス人が勘違いして「pommes d'amour」すなわり「愛のリンゴ」と呼ぶようになってしまいまいた。
なお、現代イタリア語ではpomo di moro を縮めて「pomodoro(ポモドーロ)」と呼んでいます。
ペルーで紹介されている「ヒモゲイトウ」は別名アマランス、日本ではアマランサスとも言われます。
紅い房状になる花を観賞用と思っていましたが、その葉や種子は食用になるそうです。
しかも非常に栄養価が高く、かつてのスペイン征服前には貴重な食品として広く栽培されていました。
しかしスペイン人はその形とそれを使った人々の祝祭を悪魔の仕業と見なし栽培を禁止してしまいました。
ようやく最近になって栽培が奨励され食用として使われることが復活しつつあるようです。
知らないことが色々と書かれていました。