爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「今どきコトバ事情」井上俊、永井良和編著

何か軽い感じの題名ですが、副題の「現代社会学単語帳」という方が内容を良く表しています。

編著者の井上さん、永井さんともに社会学者、各項目を書いている著者の面々も多くは社会学教授といった方々で、社会学の分野で最近よく出てくる言葉を取り上げ、その事情を解説するというものですが、一件あたり4ページという限られたスペースですので、あまり詳しくはないようです。

文章の後には参考文献が挙げられていますので、もしももっと深く知りたければそちらでということでしょう。

 

本書は2015年刊行ですが、かなり最新の言葉が選ばれているようです。

たとえば、終活、スクールカーストネトウヨビッグデータLGBT等々。

一応の意味は知ってはいてももう一段深く掘り下げるということは中々できませんので、それにも役立ちそうです。

 

ネトウヨ」は右翼的な活動と見られるかもしれませんが、その性格上は複雑なようです。

中国や韓国に対して非難をし、在留者に対する排斥活動をするということから、ヨーロッパの極右勢力と類似したものと見られそうですが、日本のネトウヨの場合はあくまでもネット上だけのバーチャルなものだということです。

その意味では現実の在特会などの活動をネトウヨが支持するというのは関連しているようで少し違うのかもしれません。

 

「逆ギレ」ということがよく言われます。

「キレる」という言葉はその前から使われており、1998年の広辞苑に載っていますが、逆ギレは2008年からです。

ただし、逆ギレは「逆」に「キレる」というわけではないようで、それよりも「弱者のキレ」といった方がふさわしいようです。

相手が「キレ」たからそれに対して「キレる」のではなく、普通に注意をされたり怒られたりといったことに対して、キレる。それが「逆ギレ」だとすると、これは「逆上してキレる」と考えた方が相応しいようです。

 

最近よく聞かれるのが「菌が、菌が」でテレビCMなどはそれが延々と続いているような気もしますが、「除菌」ということもよく使われます。

除菌だけでなく、殺菌、抗菌、など関連商品も次々と売り出されています。

菌というものが見えないからこそ、それに対する反応も過剰になりがちです。

しかし、この章の著者、川井ゆうさんが適切にも指摘しているように、過剰な除菌は体の抵抗力を弱めるだけでなく、腸内細菌などは人間と共生しているとも言われ、「マイクロバイオーム」として盛んに研究が進められています。

そのうちに、共生する細菌たちが人間の健康を保ってくれているということが分かるようになるかもしれません。

 

言葉に現れる世相、それを掘り下げるのが社会学ということが実感されるものです。