爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「なぜ、男子は突然、草食化したのか」本川裕著

本書の内容をうまく表していないような題名で、これに惑わされて読む人もいるかもしれませんが、副題の方が正確に示しています。

「統計データが解き明かす日本の変化」

ほぼこれに沿った内容です。

 

著者の本川さんはずっと統計データの利用と言うことを仕事としてきたそうで、本書内でも自らを「統計探偵」と称しています。

統計データは政府機関を始め民間でも多くの調査の結果として示されていますが、時折目を引くような内容だけを報道されることがあるものの、しっかりと見てそれを利用しようとする人はあまりいないでしょう。

しかしただの数字の羅列のように見えてもその奥底にあるものは社会の変化を極めて的確に表している場合が多く、それを見ていくことは社会を知ることにもなります。

 

ただし、業務としてそれを出している政府機関などでも時には組織の都合で、嘘を書くとまでは言わないがかなり脚色して示す場合もあり、それを見破って真実に迫るのも「統計探偵」の醍醐味だそうです。

 

せっかく書名にまでしているのですから、「男子の草食化」について書かれた初めの章について触れておきます。

草食男子、つまり恋愛に淡泊な男性のことなど統計に現れているのか。

それを探し出しました。

内閣府NHK統計数理研究所の意識調査などを当たったものの、男女の付き合い方の意向についての調査はなかなか見つからなかったそうです。

しかしようやく日本生産性本部の企業の新入社員に対する意識調査というものを見つけました。

1970年代から同様の内容で調査を継続しており、期間も長期で変化を見るにも都合の良いものでした。

それによると「どんなときに一番生きがいを感じますか」という質問があり、それに対して「友達と付き合っている時」「スポーツや趣味に打ち込んでいる時」という答えは1970年代から微増であるのに対し「親しい異性といる時」というのはどんどんと下がり続け2020年では半減まで減っているそうです。

これに関わる現象の統計データも示されていますが、「タンパク質摂取量が減ったから淡泊になった」のは因果関係では無いとは思いますが。

 

携帯電話などの通信料は日本は世界でも高いと言われています。

実際に家計費の中での通信費の割合はかなり重いものとなっています。

それなら通信費はその内容を考えても比較的高いのか。

これが実はそうでもないようです。

データ通信料金を比較するとそれほど世界各国と比べて高いわけではありません。

ここに実はからくりがあります。

データ通信がほとんどの若い人たちは通信費は安く抑えられています。

しかし高齢者ほど通信費を高く払っているようなのです。

高齢者はスマホなどを保有する割合も上がっていますが、同時に従来の電話もそのまま使っており、ダブルで払っています。

さらにスマホでも音声通話をする割合が高く、その料金も割高になるとか。

これらの要因から高齢者の通信費が高くなり、それを平均しているので我が国の家計の通信費は高くなるんだそうです。

 

国の諸機関が統計データを発表するということになっている場合が多く、よく目にします。

しかしどうやらこういった公表データにはある「クセ」がありそうです。

政府機関はどうも「省益」に沿った発表をしがちです。

そして報道機関は省庁の発表をそのまま伝える場合が多くなります。

さらに、メディアにとって関心が薄い情報は伝えられません。

メディアが好きなのは「不安をかきたてるマイナス情報」です。

このようなクセのせいで、真実の姿とは違うイメージを描きがちになります。

 

日本ではどうも男性は太る場合が多く、女性は痩せている人が多いようです。

これは統計データにも現れており、アングロサクソン型(男女とも肥満化)、欧州型(男は肥満するが女はスリム維持)、東アジア型(男女格差が大きい)、女性超過型(ロシア・ナイジェリア・メキシコ、男は痩せているが女の肥満化がすごい)、発展途上型(栄養不良で痩せていたが徐々に太り始める)

日本は一応東アジア型ですが、女性の痩身化が強いそうです。

しかもそれが若年層から徐々に中高年にまで広がっています。

また、欧州型では女性がスリムなのは健康のための動機が強いのに対し、美容動機が強いのが日本の特色だそうです。

 

日本人は「ITに不慣れ、現金依存」などと言われており、それが国際標準から遅れているかのようにも言われることがあります。

しかしどうやらその中味を見た場合には印象が違ってくるようです。

ITは「活用できない」のではなく「活用する必要がない」ようです。

割合は低いのですが、ITを使用する人々の活用力は日本人は非常に高いようです。

ただしそれを使わない人の方ではほとんどその能力もないため平均すれば低くなるということです。

これは、それを調べた「国際成人力調査」という調査法のためでもありそうです。

ここでは問題として「課題を果たすのにネットを使ってやってみる」といったことが課されるのですが、日本人ではネットなど使わずにできることがほとんどですので、「やる必要がないからできない」

結局は日本では「ネットが出てくるまでに社会の構造が良くできていたため、あえて使う必要もない」だけのことのようです。

日本人の「現金好き」も同様で、これまでに現金を使うという社会構造を作り上げており、今さら危険もあるカードやネット決済などを使わなければならないとも思えない。

それが理由だということです。

しかし、こういった調査結果が出てくるとそれを利用しようという政治家などが出てくるのは、何らかの意図があってのことでしょう。

 

統計データはしっかりと見極めて使えばかなり使えるものなのでしょう。