栄養疫学の佐々木敏教授に松永和紀さんがインタビューした記事の後編です。
wedge.ismedia.jp新型コロナウイルス感染症に効果があると称する食品などが宣伝されていますが、今回はビタミンDについて。
世界各国でコロナウイルスの感染と食生活やサプリなどとの関係について多くの研究が行われています。
ビタミンDについても研究成果が発表され、効果ありという結果も、ないという結果もあるようです。
もちろん、今回の新型コロナウイルスを対象とした研究調査はわずかなものでしょうから、その他のウイルス感染症でのものが多いのでしょうが、統計処理をしたうえで「効果はある」といった程度のものですが、実際にはほんのわずかな差のようです。
ただし、これをメディアが報道するとその効果を強調するようなものになってしまいます。
また、最近の研究でもその質に差があり単にビタミンDの摂取量だけで死亡率を比較するだけのものもあれば、年齢や人種差、既往歴などを詳しく調査して比較するものもあります。
後者の方が質が高いのはもちろんのことですが、前者のものでも一応査読付き論文であるのは間違いありません。
ただし、この「効果あり」の論文でも注意すべきは「もともと摂取量が少ない人には効果があった」という結論になっているということです。
すでに十分に摂取している人がそれ以上に摂っても効果は無いということです。
なお、本題からは少し外れますが、佐々木さんが関連して語っていることで参考になることがあります。
まず、科学情報のように見えても「査読付き論文」でないものがある。ということです。
これは科学論文としての最低限の質を保証するもので、その分野である程度の学識を有するという「査読者」があらかじめ読んで、パスしなければ掲載されないというシステムの科学論文誌を指します。
これが無いものは論文誌とは認められず、単なる情報誌でしかないのですが、それを「有効に」使う研究者も存在します。(単に宣伝に使うだけということですが)
また、「日本の医師は栄養の専門家ではないことがほとんど」というのも重要でしょう。
医師がなんでも専門家であるわけはなく、現に佐々木さんも医師免許は持っていますが、外科手術なんて絶対無理と書かれています。
しかし、「医師が薦める」という謳い文句は絶大な力を発揮するため、食品の拡販にも医師の推薦が付く場合が多いようです。
ところが実際には日本の医師できちんと栄養学を修めたという人はほとんどいないようです。
しかし、日本では栄養の基本を研究する機関、施設が非常に遅れており、その専門家もほとんど居ません。
そんな事情が「医師が薦める食品」の氾濫につながっているのでしょう。