爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「うるさい男も黙る洋食の本」茂出木心護著

たいめいけん」と言えば東京日本橋に店を構える洋食の老舗ですが、この本はその店を昭和初期に開店した先代が書いたごく初心者向けの洋食の作り方と言った本です。

 

著者の茂出木心護さんは裕福な商家の生まれだったのですが、実家が零落したために中学を中退し洋食店の本家泰明軒に奉公に出て、努力の結果のれん分けを許されて「たいめいけん」を開店しました。

その後、後継ぎも成長したためか一般の人々の調理に対する疑問に答える、「お料理110番」という電話相談の活動を1960年に始め、多くの人からの質問に答えたそうです。

この本ではそういった中から様々な質問例を示し、料理初心者たちが持つような疑問に答えようというものです。

 

ただし、出版が昭和53年(1978年)ということで、まだまだ「料理は主婦、食べるのが主人」という時代ですので、この本も対象は料理に慣れない新米奥様というところです。

つまり、表題の「うるさい男」というのはそのような奥様達が相手にする旦那たちのことを指しています。

現在の感覚とはかなり違いがありそうですが、それでも料理の第一歩というのはそれほどは変わりはないでしょう。

 

もう40年以上も前の時代ですから、現在のように世界各国の料理が町中で食べられるということはなく、明治以降に発達した日本風の「洋食」が食べられていた時代からさほど離れていない頃でした。

そのため、本の最初のところでも、コロッケ、豚カツ、エビフライ、カキフライの上手な作り方といったところから始まりますので、今のような詳細なレシピ本があふれるほど出版されている状況とはかなり異なります。

それでも、家庭料理という意味では私などの年代には懐かしく感じるところです。

 

なお、歴史を感じさせるところは「食材の買い方」のところで、スーパーも良いけれど専門の肉屋、魚屋、八百屋を上手く利用すると食材についてのヒントも貰えると言った記述です。

そういえばその当時はまだそのような店も多かったなという記憶がよみがえります。

 

なお最後には洋食屋の経営といった話にまで飛んでしまい、「ウェートレスでも良い子はすぐにお嫁に行ってしまう」といった愚痴まで登場します。

そういう時代だったのですね。

 

まあ料理本というよりは歴史本に近いイメージになってしまいました。