爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「キッチハイク! 突撃!世界の晩ごはん」山本雅也著

「キッチハイク」とは「キッチン」を「ヒッチハイク」する。

すなわち家庭のご飯を食べさせてもらうというものです。

現在はそのWebサービスを立ち上げて活動している山本さんですが、その基となる経験を世界中でしてきたそうで、その記録を本にしてしまいました。

 

世界の家庭といってもほとんど知り合いではなく、友達の友達を紹介してもらいといった程度の相手方を訪ねるというもので、名前と住所だけは聞いているものの、どんな人が出てくるかも分からないということで、結構怖ろしい?経験もあったようです。

全身入れ墨だらけの男が出てきたり、目つきがおかしく麻薬中毒ではないかと思ったり。

それでもひとたびご飯を作ってもらい食べさせてもらうと結構良い人だったとか。

 

とにかくその相手を探すのもコネ次第ということで、年齢も生活状況も様々です。

若い女性もあり、70代の夫婦もあり、また紹介してもらった人ではなくその母親が料理をするという場合もあり。

料理の腕もセミプロ級の人も、完全な家庭料理という人もいます。

ただし、いちおう普通の家庭料理というリクエストはしたようで、客用ということは意識はしていてもそれほど特別というものではなかったようです。

 

味も千差万別、中南米やインドなどではかなりスパイスが強いものもあり、山本さんが思わず美味しいと叫ぶものもあり、また何も言えずに飲み込むだけのものもありといったところです。

 

ブルネイのアマルさんという家を訪ねた時は、ホテル経営者ということでかなり裕福な家庭のようで、さらに一家に親戚まで集まり大人数の宴会となりました。

魚や肉など多くの料理が並んだのですが、そこに不思議な食べ物も並んでいます。

それが「アンプヤット」というものでした。

山本さんが小エビの塩漬けをつまんで食べようとすると、皆が「そのまま食べてはだめ、アンプヤットと一緒に食べろ」と言います。

水飴状のアンプヤットにはほとんど味も臭いも無く、ゼリー状の塊です。

それに好きなおかずを載せて一緒に飲み込むというのがどうやらブルネイの食習慣だということでした。

 

ロッコのフェズのソフィアという女性の家を訪ねた時は、まず伝統的なタジン鍋を見せられ、その使い方の説明されます。

水の少ないモロッコでは調理にも水はあまり使えず、タジン鍋に食材をそのまま入れて加熱し出てくる水分で調理をするためにあのような形になった鍋を使うのだとか。

しかし、いざ調理となるとソフィアはタジン鍋は使わずに、なんと圧力鍋を取り出します。

今どきはタジンなどを使う人はほとんど無く、皆圧力鍋が便利なので使っているそうです。

山本さんはちょっとがっかりしますが、出来上がった「牛肉、プルーン、ゴマ」の煮物を食べるとそのハーモニーに感激することとなります。

 

日本では世界各地の料理が食べられますが、その国の家庭料理はレストランで食べられるものとは少し違うようです。

しかし日本では家庭料理というものがかなり変わってしまっているのではないでしょうか。

わが家などもしも外国人が来て家庭料理を食べさせてくれと言われても何も作りようがないかもしれません。