爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「家庭のフランス料理」辻静雄著

辻静雄さんは、調理師養成機関として大きな存在となっている辻調理師専門学校を設立し発展させてきた方です。

もとは新聞記者であったそうですが、その後料理の世界に転進しました。

 

この本は辻さんの著書の中でも非常に早い時期のもののようで、昭和42年(1967年)に婦人画報社から出版された「たのしいフランス料理」という本を大幅に加筆改訂して昭和60年(1985年)に文庫版として出されたものです。

 

辻さんは料理を目指した当初はヨーロッパ、特にフランスに何度も訪れ、多くの料理人と交流を深め、数多くのレストランでの食事も経験していたようですが、そういったものの中から選りすぐりの料理のレシピをまとめたものです。

一応、細かい作り方を説明されており、また当時はあまり日本ではなじみの薄かったような食材や調理器具の解説までされています。

 

ただし、これを読んで普通の読者がその料理を作ることができたかどうか。

 

あとがきに、ピアニストの中村紘子さんが書かれているように、「辻静雄氏のフランス料理に挑戦し、10名の方を招いてのディナーは大成功だったが、三日間寝込んだ」そうです。

ヨーロッパ経験の長い中村さんでさえ大変な苦労をしなければならなかったような内容です。

食材も、今では少しは流通することもあるのかもしれませんが、「子牛の骨1kg、鳩2羽」なんていうものが買えるということはなかったでしょう。

まあ、プロのフランス料理店であれば参考にはなるかもしれませんが「家庭の」料理の参考にはほとんどならないものだったと思います。

 

それではどういった人がこの本を読んだのか。

そもそも、自分がなぜこの本を買って読んだのか。(それはたぶん自分が30代の頃だと思います)

やはり、読んだだけでも想像力が働き、ヨーロッパことにフランスというものに対しての憧れが刺激されたということでしょう。

 

多くの料理が紹介されていますが、ほんのさわりだけ。

キッシュロレーヌ

もともとはロレーヌ地方の郷土料理で、遅い春の訪れを祝う祭りなどにも用いられます。

チーズの香りに包まれた温かいオードブルとして、寒い冬の夜などにいかがなものでしょうか。

 

そうは言われても簡単には出来ません。