爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「孔子さまへの進言 中国歴史人物月旦」楊逸著

「人物月旦」とは中国後漢の許劭が毎月1日(月旦)に当時の人物の評価を著したことで有名になった「月旦評」を指します。

曹操もその対象としたことで知られています。

 

この本は中国出身で現在は日本で大学で教鞭をとる傍ら様々な著作を著している楊逸さんが、歴史上の人物(まあ最近の毛沢東蒋介石も入っていますが)について、あれこれと書いているのですが、そこには著者の中国での経験が色濃く反映されています。

 

楊逸さんは1964年中国のハルビンの生まれですが、地主階級の出身で親族は内戦時に蒋介石に従って台湾に逃れた人も居たということで、中国での子供時代はかなり苦労をしたようです。

それでも勉学を重ね日本へ留学をする機会を得て、それからは中国とは距離を置いて判断することができるようになりました。

 

そういった体験や家族親族の想いなども強く含まれての歴史上の人物の「月旦評」ですので、かなり独自のものとなっているのかもしれません。

 

取り上げられている人物は、毛沢東蒋介石孔子さま、始皇帝、李煜、武則天魯迅です。

李煜はあまり知られていないでしょうが、中国五大十国時代の南唐の皇帝であったものの政治能力はほとんど無く北方の宋に滅ぼされたものの、文芸の能力は非常に高く、宋代に栄える詞という文芸の代表的作家です。

また武則天という名ではあまり通りませんが、日本では則天武后という名前の方がよく知られる、中国唯一の女帝です。

 

毛沢東蒋介石は著者の人生に大きな影響を及ぼした人物ですので、その書き方にも強い思いが込められているのも仕方ないことでしょう。

教科書に出てくる文章が、革命以前は孔子のものばかり、そして中共以降は毛沢東のものばかりというのも、中国の実情を教えてくれるものです。

魯迅は日本では有名な作品を残した文学者という印象ですが、中国ではその死後に政治的に利用されたために強いイメージを持たされてしまったようです。

そのため、中国本土では聖人のような扱いをされる一方、台湾では正反対の見方をされているということです。

 

登場人物は皆聞いたことがある人ばかりですが、日本から見るのと中国から見るのでは相当違うものだということに気づかされました。