星新一さんは日本のSF、そしてショートショートという分野を開拓し現在のような隆盛を築いてきたのですが、1997年に亡くなりました。
しかし現在でもその作品の人気は衰えません。
そこで、星さんの作品だけでなく、エッセーや書簡、対談なども含めてあまり一般的には流通していないものも収集しまとめて本にしてしまったというものです。
章ごとにテーマがあり、エッセイⅠ、小説、作品解説、翻訳、エッセイⅡ、インタビュー・講演録・アンケート、対談・鼎談、お便り、メッセージとなっています。
珍品と言えるのは「お便り」
SF専門誌や同人誌に向けて「東京都星新一」といった署名で手紙を書き、その本の感想などを告げるというもので、その編集者が保存していたものでしょう。
星さんが後輩などに対して丁寧に意見を告げているという、心配りを示しているものです。
鼎談のコーナーで掲載されているのが、奇想天外というSF誌で行われたSF新人賞の選考会の様子です。
これを小松左京、筒井康隆の2氏と星さんと合わせて3人で選考しているのですが、そのやり取りをそのまま記録しています。
第1回が1978年、それから第3回までの選考会の様子ですが、第1回の佳作が新井素子「あたしの中の」、第2回の佳作が谷甲州の「137機動旅団」と、その後も活躍している作家のデビューの様子が分かります。
SF初期の様子というものも星さんの活躍を顧みると付き物のようになりますが、その当時に繰り返し聞かれたのが「SFの書き方」だそうで、星さんもだんだんそれに応えるのが嫌になっていったようです。
アメリカの作家、ロバート・オバ―ファーストという人が書いたという、「ショートショートの書き方」という文を紹介していました。
それによると「四十枚の短篇を考え、それを十枚に圧縮すれば良い」のだそうです。
「これはいささか無責任な発言だ」と書かれていますが、しかしアメリカの小学校では実際にこういった授業も行われているそうです。
短く要領を得たものが良いというのがアメリカの価値観だということです。
それに対し、日本では演説や祝辞などは長い方がありがたいという概念があるようで、文章を圧縮する技術というものを必要とはしません。
しかし、本当に必要なのは圧縮技術の方だということです。