爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「となりの心理学」星薫著

放送大学で心理学を教える著者は、放送大学で学ぼうとする社会人たちには非常に強い「心理学への興味」があることを感じています。

一方、授業で心理学を習う学生たちにとっては、あまり人気の無いのも心理学だということです。

やはり、ある程度人間関係や実際の人間の問題について考えるようにならないと、心理学というものへの興味が湧いてこないというものかもしれません。

 

しかし、心理学というものがどういうものかということは、一般にはあまり知られていないことかもしれません。

そこで、心理学の概要というものが分かるようにこの本で説明しています。

アメリカで同じような趣旨で出版されたハンドブックの形式の本があり、そこでは104の項目に分けて記載されていますが、この本でもそれに準じた形式で書かれています。

第一章「動物としてのヒト」、第二章「誕生してから成人し老年期までの変化」(ハンドブックの”発達心理学”に該当)、第三章「感覚器官を通して取り込まれた情報」、第四章「記憶の働き」(ハンドブックの”認知心理学”に該当)、第五章「生まれてから成長していく過程でどう会得していくか」(ハンドブック”基礎的学習過程)、第六章「頭の中の記憶されている情報をもとにどのように世界を把握しているか」、第七章~第九章「ハンドブックの”個人差と人格”の中の話題をそれぞれ個別に扱う」

といった構成になっています。

 

心理学の世界の概観ということですので、一つ一つの記述はコンパクトであり簡潔すぎるという印象もありますが、詳しく知りたいことがあればそれぞれを詳述した別書に進むべきでしょう。

そのリストも巻末に掲載されています。

 

記憶というものについて

心理学者たちが記憶というものについて研究し始めたのは19世紀末からのことでした。

それまではプラトン以来の哲学の伝統で、記憶も思弁の対象とするものであり心理学で客観的に測定したり実験できるものではないと考えられていました。

しかしドイツのヘルマン・エビングハウスという心理学者が初めて記憶についての実験を行い、その後多くの研究者が続きました。

漠然と「記憶」という言葉を使ってしまいますが、実は「覚える」「覚えている」

「思い出す」という3つの部分はそれぞれ違う働きです。

「覚える」ことを「記銘」と呼びます。

同様に「覚えている」ことは「保持」、「思い出す」ことは「想起」です。

そのそれぞれの働きの特性、「忘れ」というものの発生、記憶の変成など、様々なことが研究されてきました。

 

IQと知能

いわゆる「IQテスト」なるもので測られるIQが高いからと言って、どうも「頭が良い」とも言えない人はよく見られるようです。

これはIQで対象としている能力以外にも多くの能力が関わっているからだということです。

ロバート・スタンバーグは、4種の知能を提案しました。

1,分析的知能 これはIQと同じ意味で、だいたいその人の学業成績ともっとも近い関係にあるようです。

2,実践知能 学校で習う問題ではなく社会生活で起きる様々な問題に対処できるような能力です。

3,創造性 ノーベル賞を取るような人達はIQがすごく高いかというとそうではない人も多いようです。彼らは高い「創造性」を持っているということです。

4,知恵 上記の3能力以外に必要なものがこれだということです。多くの事のバランスを考えるような能力です。

 

ハワード・ガードナーも「才能」というものをいくつかに分類しました。

「言語能力」「論理・数学的能力」「空間能力」「対人能力」「音楽能力、身体・運動能力」

これにさらに付け加えたのが、サロヴェイとメイヤーで、「感情知能」という知能を提起しました。

どうやら、人の能力というものもかなり多くの側面があるようです。

 

心理学というものは、なかなか奥の深い興味深いものだなと言うイメージだけは感じさせてくれました。

やはり深いところは別に学ぶ必要があるのでしょう。