2013年出版のこの本をその後かなり早い時期に読んだのですが、その時の読書記録を見るとかなり興味の対象も変わっているようですので、もう一度書いておきます。
今回一番印象が深かったのは冒頭の部分ですが、前回の記事にはまったく触れていませんでした。
SNAP、食糧支援プログラム(かつてはフードスタンプと呼ばれた)についての部分です。
生活保護者だけでなく、ある程度の収入のある人でも受給することができるのですが、その受給を勧めるようなCMが流れているそうです。
すでに莫大な財政赤字を抱えているアメリカ政府ですが、それでもこのような政府支出を増やすような政策の宣伝までしています。
ここには、このプログラムで儲かるような産業ができており、彼らが政府にその拡大を働き掛けているという事情があります。
SNAPが助けているのは困窮したワーキングプアや失業者、零細農家などではなく、「SNAPの売り上げが入る食品業界」「SNAPによる偏った食事がうむ病気で儲かる製薬業界」「SNAPカード事業を請け負う金融業界」の三者だそうです。
第5章「政治とマスコミもかってしまえ」という章題も刺激的ですが、これが事態を正確に描写しています。
ALEC(米国立法交流評議会)という組織の存在はそれほど有名ではないかもしれませんが、これが企業などからの資金で動いており、連邦議会や各州の議会でスポンサー企業のための立法を促す活動をしており、自らが企業のための立法案の作成に関わりその成立を議員たちに働きかけています。
貧困大国という書名ではありますが、実際には大企業が政府を動かしている状況を鋭く描写したものと言えるでしょう。