税金というものは国家そのもののようでもあります。
この本では税金を通し、歴史の最初から現代まで、そして将来どうなるかといったことまで述べていきますが、「税金の世界史」というよりは、人類の歴史というものは税金がその本体だったのではないかと思わせるほどです。
人類文明はメソポタミア文明から始まると考えられますが、その頃にはすでに税というものがあり、当時の記録として残っています。
そこから世界のあちこちに生まれた国家はどのような政体を取ったとしても税というものは常に不可欠のものでした。
今のように公共事業や社会福祉のためといった税金の使われ方だけでなく、戦争のためであったり、王族の浪費や国王の贅沢な建設物のためだったのかもしれませんが、いずれにせよ庶民を絞り上げて税を取り立てていました。
戦争のための増税というのはいつでも国民の大きな負担となり、反乱を起こすきっかけにもなりました。
イングランドは14世紀にフランスと百年戦争と言われる戦争を戦っていますが、その戦費は非常に重いもので、特別税と称して数々の負担を次々と押し付けました。
それに耐えられなくなった人々は反乱を起こします。
歴史で習った覚えがありますが、ワットタイラーの乱と言うのもこのころのもので、「ワットタイラー」とは「タイル職人のウォルター」という意味だそうです。
反乱は時に優勢となることもありましたが、結局は国王側の勝利となり反乱主導者は処刑されてしまいました。
これはアメリカ政府にとっては酒税収入が無くなるということでも大きな問題でした。
その当時の政府収入の40%を酒税が占めており、禁酒法などというものが成立するということは誰も考えられなかったものでした。
しかしウッドロー・ウィルソンが大統領となると、高すぎる関税を改革すると称して所得税を導入しました。
それまでは所得税というものは憲法違反だという裁判判決もあり認められなかったのですが、うまく法律化し通していきました。
そしてその所得税導入により政府税収が確保できたために禁酒法も通すことができたそうです。
ナチスドイツはその当時の他の大国が増税を繰り返していたのに対し、ドイツ国民に増税はしないことを約束して支持を獲得していきました。
しかし軍事費増などで政府支出は増加していったため何らかの増収が必要でした。
そこで彼らが取った政策が、「ユダヤ人の財産を狙う」ことだったそうです。
ナチスドイツが戦った戦争の戦費の3分の1がユダヤ人から没収した財産で賄われたということです。
現代の税ということでは、グローバル企業の税負担のごまかしが問題となっています。
しかし旧態依然たる国民国家の税制でグローバル企業の活動から徴税するというのは難しいものです。
このまま国家税制が敗北することで終わってしまうのか。
この点については著者は楽観的なようです。
今でも特に小国家、エストニア、ブラジル、メキシコなどではどんどんと税制を変えていっておりIT化を進めればグローバル企業の課税も可能となるだろうとしています。
ただし、現在の大国、アメリカやヨーロッパの大国、日本などは制度の変革がなかなか進まないためにそれに乗り遅れがちだとか。
さて、税金というものは今後どうなっていくのでしょうか。