「おいしい、健康」というサイトの「読む、えいよう」というコーナーで、科学ジャーナリストとして活躍されている松永和紀さんが書いていました。
今の野菜は昔と比べて味が落ちているとはよく言われますが、それとともに「栄養価が下がっている」とも言われることが多いようです。
その理由として、化学肥料や農薬の使い過ぎということも言われますが、「土が悪くなった」ということも指摘されます。
この辺の事情を解説されています。
まず、「本当に栄養価が下がっているのか」
これは、数値で見ることができますが、文部省が1950年から発行している「日本標準食品成分表」を見ると、確かにその当時の栄養成分含量と最近の数値と比べると昔の方が高いというものが見られるようです。
(日本標準食品成分表は、その原型は戦前に見られるが、1950年以降現在の形となった)
この事実を使って、「化学肥料の使い過ぎで土が痩せて栄養が低下した」というストーリーを作り広めたのが、「あの有名なマンガ」だそうで、これをそのまま踏襲し商売に使っているところもあるようです。
ところが、文科省自身が解説しているように、「分析法が変わっているので単純な数値の比較はできない」ということです。
ビタミンCについていえば、昔は滴定法という方法を使っていたのが、その後、比色法さらにHPLC(液クロ)と変わってきて、滴定法はかなり過大な数値が出るということも分かっています。
また、野菜の成分は産地、品種、収穫時期によって非常に変動が大きく、現在の成分表ではかなり細かく分類して表示しているのですが、昔の成分表ではそれが何時収穫したものかもはっきりしていないとか。
とはいえ、昔の野菜は今のものとは違うという印象は誰もが持っているでしょう。
それは、主に「品種の変化」によるということです。
それも、「消費者の好み」に合わせようとしてのことで、「より甘く、柔らかく」という品質が求められているため、それに適した品種の種や苗を栽培するということになります。
もしも栄養成分の変化があるとしても、その影響が強いようです。
このあたりも、商売に利用されがちな点なのでしょう。