様々なエネルギー源に目を向けなければならない今こそ、EPR(Energy Profit Ratio:エネルギー収支)をしっかりと考える必要があるということは、何度か書きましたが、それについて考えていくと様々な点で非常に問題が多いことに気づきます。
そういった点をいくつか挙げてみます。
あまり考えもまとまっておらず、分かりにくいものですが、自分の思考の経緯をたどるためにも記録しておくという意味が強いものですので、ご了承ください。
これまでも、風力発電のEPR計算には鉄材の製造にかかるエネルギーや建設機械のエネルギーが多すぎてとても正確な入力エネルギーを計算することは困難ではと書いてきました。
これは風力発電だけでなく、水力や太陽光発電でも同様のようです。
特に風力発電の場合は山地や海に大規模な構造物を建設するということもあり、建設エネルギーは重要なものです。
それは水力発電でも大規模ダムを建設する場合には同様ですし、太陽光発電でも最近は山間地に大規模に設置することもあるでしょう。
こういった建設工事には、多数の土木建設用重機が使われます。
また資材の運搬にも大型トラックが多数使用されるでしょう。
こういった建設・運搬用のトラックや重機の「入力エネルギー」はどういうものか。
おそらく、重機自体の製造エネルギーは計算が難しい上に、その耐用年月に比べてその建設工事での使用期間が短いことから無視してもさほどは影響はないと考えられているのではないでしょうか。
しかし、耐用期間を仮に20年とし、建設期間を1か月としても、240分の1はあるわけで、決して無視できる量ではないでしょうし、何よりその建設した発電装置で生み出す出力エネルギーも大した量ではないですから、比率から考えればバカにならないということにもなりそうです。
また、その重機・トラックも現状ではほぼ間違いなく重油やガソリンなどを使ったものであるはずです。
これも、「脱炭素」の時代になればすべて「電気トラック、電気重機」になるのでしょうか。
そんなものが使い物になるのかどうか、疑問ですが、しかしその方向でなければならないのでしょう。
今でも電動のフォークリフトというものはありますが、その使用はたいてい工場や倉庫の中だけでそれほど長距離を走るということもないでしょう。
航続距離を長くするために蓄電池を多く積めば、蓄電池だけを運ぶことにもなり兼ねません。
さらに、「蓄電池の耐用年数」も問題となります。
トラックなどの車体やエンジンならばかなりの耐用年数が期待できるでしょうが、蓄電池はそうはいきません。
10年ほどで交換となれば、その製造・廃棄のエネルギーも馬鹿にはなりません。
このように、建設や運搬に関わる機械の能力が激減する場合、それで建設される発電設備自体のエネルギー収支が悪化するという影響もかなり大きいものではないかと想像できます。
この問題もとても現在の私が解明できるはずもないのですが、研究者でも明快な解答ができる人はほとんどいないのではと思います。
とにかく、この分野の研究を進める体制を早急に固める必要があります。
EPRの件からは少し離れますが、「風力発電設備の建設資材」って具体的にはどのようなものなんでしょう。
これまでの多かった例では、やはり鉄筋コンクリートで塔を作りそこに強化プラスチックの羽根を付けるということでしょうか。
鉄筋もコンクリートも入力エネルギーの算定はよほど注意しなければ穴だらけになりそうです。
しかも「強化プラスチック」って、何から作られているのでしょう。
石油を使わないようにしていこうと言いながらプラスチックを使うというのはもう無理です。
そうなると、鉄製に羽根素材も変えていくことになりますが、それも大変な入力エネルギー投入になりそうです。
「海上風力発電装置」に至っては、どうも船のような構造物を作って浮かべるイメージのようです。
これも鉄の塊になりそうですが、これに必要な鉄材はどれほど莫大なものになるのでしょうか。
とても、「エネルギー収支」に配慮しているとは思えません。
どれをとっても、エネルギー問題を根底から崩しかねないほどの問題と感じています。