コロナウイルスの感染拡大が抑えられるかどうか問題となっているところに、各種のウイルス変異株が検出されたということで、報道も加熱しているようです。
ウイルスの変異株ということについてまとめておきましょう。
ウイルスに限らず、すべての生物には変異というものがつきものです。
DNA(またはRNA)*という遺伝子の主要構成成分は、4種類の塩基(アデニン・グアニン・シトシン・チミン)がつながった構造になっています。
そのつながりの順番で遺伝情報が継承していきます。
この遺伝子は複製という機能で増えていくのですが、それは当然ながら「同じものを作り出す」のが基本です。
しかし、その複製段階でごく小さい発生頻度ながら失敗することがあります。
これが変異という現象であり、ウイルスであろが動物であろうが必ず起きることです。
その変化した遺伝子の働きというものは、必ずしも有利に働くものではなく、多くのものは不利なものであり、生存すらできない変異株の方が大多数でしょう。
しかし、ごく低い確率ながら元の生物より優れた性質を持つものが誕生します。
今回のウイルスで言えば「感染力が強い」というのがその優れた性質になるわけです。
これは、「生物の進化」であるとも言えます。
今回のウイルスについていえば、英国、ブラジル、南アフリカなどで誕生した変異株がすでに日本国内でも確認されています。
これらはいずれもかなり広範囲に感染拡大したところですが、ということは「ウイルスの増殖も盛んだった」ことになります。
増殖が盛んであれば遺伝子の複製の回数も多かったわけであり、変異の可能性も強くなります。
「日本株」が今のところ確認されていないのも、日本ではそれほど感染拡大が進んでいない、=増殖回数も多くない、という理由に過ぎません。
しかし、本当にすべての日本のウイルスが同じであるとは限らず、ごくわずかでも遺伝子が変化したものがあるかもしれません。
それを変異株と名付けるほどの変化ではないだけだと思います。
なお、今知られている変異株はどれも「感染力が強まっている」とされています。
これは当然の話で、おそらくこの陰にはその数十倍、数百倍の変異ウイルスが誕生しているはずですが、そのほとんどは死に絶えるかわずかに生き延びているだけで、ただ感染力が強まったウイルス株だけが増殖しているからにすぎません。
さらに、「人間の致死率が高まった」という報告もあるようですが、これはウイルスの進化から言えば逆方向です。
ウイルスの毒性が強まるほどウイルスの繁殖には逆効果になります。
エボラ出血熱など致死性の高いウイルスがなかなか広まらないのもそのためです。
広まる前に感染者が死亡してしまうので、ウイルスの拡大もままならないわけです。
このコロナウイルスもやがては弱毒化していくだろうという方向性の観測もできます。
とはいえ、そのような将来の話より現在の感染拡大の方が重要ですから、今はとにかく変異株、元株に関わらず感染を防ぐということが大切です。