太陽光発電や風力発電などがどんどんと増えているようですが、そのエネルギー収支(EPR)をしっかりやらなければという話をつい最近書きましたが、そんな真面目な話など吹っ飛んでしまいそうなひどい話が出ています。
なんと「アンモニアを発電などの燃料に」というものです。
news.tv-asahi.co.jpテレビニュースのサイトですので、すぐに消えそうですから題目だけは引用しておきますが、
「アンモニアを発電燃料に、実用化への課題は」というものです。
まずは石炭火力発電でのアンモニア混焼を取り入れて、徐々にアンモニア専焼を目指し、2050年には年間3000万トンを導入とか。
また、「課題」の方では現在の生産量はごく少量に過ぎないこと、そして「生産過程で大量の二酸化炭素を排出すること」だそうです。
「アンモニア燃料」で検索すると多くの企業や大学の研究が引っかかります。
多くの技術屋がその開発で研究費を稼ごうとしているのが分かります。
アンモニアは化学式はNH3、これを燃焼させれば酸素と結合してNO2とH2Oとなります。(理想的にはですが)
その燃焼では二酸化炭素を出さないということは間違いないのでしょうが、二酸化炭素排出だけが問題かのような見方をするとこういうトンデモ技術が現れるわけです。
なぜトンデモか。
上記の生産過程というところです。
どこからNとHを持ってくるか。
N(窒素)は肥料製造の話でも出ましたが、ハーバーボッシュ法で空気中の窒素ガスをそのまま固形化します。
ただし、そのためには高温高圧の条件が必要であり、そのために現在では化石燃料が使われています。
H(水素)も問題で、これは燃料水素の時にも大きな課題となりますが、なんと天然ガスなどから取り出すというバカさ加減です。
化石燃料削減と言っているのに、それを使わなければならないということを「矛盾」とも考えられないのでしょうか。
なお、水を電気分解して水素を取り出すなどと言う夢物語もありますが、恐ろしいほどの低効率の話です。
このようなことは、最初に取り上げた「太陽光発電や風力発電のエネルギー収支を厳密に計算すべき」などというレベルにも届かないほどの話でしょう。
なお、財部明郎さんという方のブログには核心をついた表現がされていました。
それは「アンモニアはエネルギー・キャリアにすぎない」ということです。
つまり、エネルギーを生み出すものではなくあるエネルギーを別の形態に移すだけのものだということです。
この方は石油関係に勤務され技術に詳しい方ということですので、見る目も確かなのでしょう。
アンモニア発電…マスコミが報道しない問題点 このままではかえって温室効果ガスが増えてしまう |
なお、このサイトで財部さんが強調されているのは、アンモニア発電で二酸化炭素排出無しなどと言うのは誤りで他の工程を見ればかえって多くの二酸化炭素を排出するということです。
当然でしょう。
とにかく、二酸化炭素排出を減らすなどということばかりに気を取られるのでこういった変な話が横行するのでしょう。
もっと本質を、つまり化石燃料をすぐにでも使わない方向に進むことが絶対必要ということを直視しなければ、間違った方向にばかりさまよい歩くだけのようです。