日本語教師の清水さんと、東大准教授の言語学トム・ガリーさんが、日本語の微妙なニュアンスをできるだけ英語に置き換えるという、本当の意味での翻訳を追求したというもので、1年ほど前にも一度読みましたがあまりにも扱っている単語が多いため再読しました。
前回は取り上げなかったことを記しておきます。
前置詞のところは、日本人は正確な使い方ができていないようですが、そのためもあり、和製英語が多い部分でもあります。
「アラフォー」なんていうのは、和製英語という以上に独特の語感まで出してしまって英語をはるかに超えているようです。
アットホームというのも、元来は副詞句であるものを形容詞に使ってしまうというもので、英語では「homey」と書く方が正しいとか。
マイが付く言葉も日本人が大好きなようで、マイホーム、マイペース、マイバッグ等々、英語の場合は間に「own」を入れなければ通じないことが多いようです。
中で、「マイブーム」は最近はよく使われるようですが、この場合「ブーム」(boom)は「世を挙げて人気沸騰」といった場合にしか使われず、日本で言うマイブームの意味はまったくないそうです。
英語の単語をカタカナ語として使うというのも非常に多くなっていますが、その意味がかなりずれていることも多いようです。
これが日本人が英語を使う場合に邪魔になっている面もあります。
「トラブる」なんていうのも、ほとんどが英語では使われないような場合に使ってしまっていることが多く、翻訳には注意が必要でしょう。
また「サボる」はほとんど日本語として意識されているでしょうが、sabotageが本来の単語です。
ただし、このsabotageは英語では「破壊活動」を意味しており、日本での用法のようには使われません。
先住権という単語は英語で「aboriginal right」と言うそうです。
著者の清水さんも、「アボリジン」はオーストラリア原住民のアボリジニの方が印象が深かったようですが、aborigineは英単語で先住という意味の言葉であり、アボリジニはそれから来たということです。
私もオーストリアの先住民の言葉から来たもののように感じていました。
反対語というものを考えていけば、その言葉のたくさんの意味が分かってくるというのも面白い記述です。
「男」の反対語は「女」であるだけでなく、「坊や」も「夫」も反対語となり得るということを知らなければ、日本語において「男」という言葉の使い方もごく一部しか知らないということになります。
そうでなければ「選挙で私を男にしてくださいという候補者」や「うちのやつ、どうも最近男がいるみたいだ」という言い方が本当の意味では理解できていません。
日本語を深く考えるには、英語を通してみることも有効なようです。