経済に「グリーン」とか「ブラック」とかあるのかと思いますが、どうやら自然エネルギーへのシフトを目指したり森林の再生を行なったりする活動を経済と結びつけるとグリーン経済となるようです。
序文にあるように、「地球温暖化の進行、漁業資源の枯渇、森林破壊の進行、大気や水質汚染の激化、生物多様性の喪失」といったことから現在の資源利用法は持続可能なものではなく、このままでは立ち行かないという認識はあるようです。
環境破壊といっても、この本の認識ではどちらかといえば二酸化炭素温暖化よりは森林破壊や大気汚染水質汚濁を重要視しているようで、それはまだマシと言えるかもしれませんが、それでも二酸化炭素温暖化も理由の一つにした上での「自然エネルギー転換」を主張しています。
この点で、私がこのブログで以前から強調している「脱化石燃料エネルギー」と似た観点のように見えるかもしれません。
しかし、大きな違いがあることは確かであり、それは私の考えが「エネルギー依存の文明はそもそもその発端から間違っている」という認識であるのに対し、そういった疑問を全く持たずに現在の社会を肯定しているところにあります。
そのために、本書のように「化石燃料がなければなんとしてでもエネルギーを得る必要がある」ということになり、自然エネルギーなるものの非効率性にも気が付かずにそれに頼り切るということになってしまいます。
太陽光や風力自体は、確かに「自然の」エネルギーですが、それを電力なり動力なりに変換しようとするところで、得られるエネルギーよりはるかに大きいエネルギーを使って装置製造をしなければなりません。
その「正確な収支」が議論にならない現在では、その将来なども論じることはできません。
そんなわけで、本書の中味までは論じる気にもなりませんが、一つだけ。
「アメリカでも中国でもグリーン経済を志向する動きが出始めている」ということです。
本書刊行の2012年には、若干でもそのような兆候が見られたのかもしれませんが、現在のトランプのアメリカ、習近平の中国、(さらにはプーチンロシア、安倍日本)でその残骸でも残っているでしょうか。
おそらく、著者のお二人も現在の米中を始めとする世界の情勢には大きな落胆を感じておられるのだと思います。
(そんなヤワな感性じゃないか。)
なお、ケチばかりつけるだけではありません。
本書で紹介されている森林再生や、フェアトレードの推進は絶対に必要なことであり、また廃棄物の適正な処理は当然ながら最大限に意識される必要があります。
全然できていませんが。