ここから先が少しの条件の差異で大きく状況が変わってくるところです。
ガソリンなど化石燃料使用の自動車等の、個人使用は多額の税金徴収によって制限するという基本方針ですが、かといって移動手段、運輸手段を徒歩や馬車に限る訳にはいきません。
そのためにも脱エネルギー化の初期には何らかの方策で公共交通や貨物輸送手段は確保する必要があります。
ただし、これらも個人に任せることは避けなければならないと考えています。
初期の段階ではあくまでも化石燃料は残存しています。価格もそれほど高騰はしていないはずです。日本が化石燃料争奪戦から撤退したとなれば産油国側の販売攻勢も強まりかえって価格は下落するかもしれません。
その状況で自由競争を許せば元の木阿弥となるでしょう。
ここは鉄道だけでなく、道路交通も海上輸送も、国内については公的なコントロールをしていかなければならないところです。
なお、現状の輸送手段のエネルギー効率を調べてみました。
資源エネルギー庁の作成した資料がありました。
2.1.2 部門別エネルギー消費の動向 │ 資源エネルギー庁
やや古い2002年あたりの数字ですが、
旅客部門で自家用自動車2.4、バス0.8、鉄道0.18、飛行機1.7 (単位MJ/人Km)
貨物部門で営業トラック2.6、自家用トラック13.8、鉄道0.23、海運0.58、飛行機22.6(単位MJ/トンKm)
です。
鉄道の効率の良さ、トラックの浪費ぶり(飛行機並)ということが分かる数字です。
さらに、交通手段とエネルギー源を考えてみます。
旅客
飛行機 ジェット燃料(石油由来)
鉄道 電気
軽油 その他(石炭:ほとんどなし)
自動車 石油由来燃料
電気
水素(ほとんどなし)
その他、自転車・徒歩・人力車・カゴ
貨物
飛行機 ジェット燃料(石油由来)
鉄道 電気
軽油その他
自動車 石油由来燃料
(自動車も貨物については電気は少ない)
船舶 石油由来燃料
天然ガス・石炭
その他、馬車・牛車・リヤカー
このように、石油や天然ガスなどの供給源減耗の不安から使用自粛を考えているエネルギー源を用いる輸送手段としては、特に「飛行機」「自動車(貨物)」であるということが分かります。
また、上記のエネルギー効率から見てもこの二種の輸送手段は可能な限り速やかに使用を避ける方向で取り組まなければならないと言えるでしょう。
これらのことから、来るべき「脱エネルギー社会」(ただし、ある程度のエネルギー消費は当分の間は残す)では、旅客移動は鉄道主体、貨物輸送は鉄道と船舶、とするべきでしょう。
ただし、都市間輸送などでは大規模鉄道の輸送が現存の設備で可能ですが、都市内輸送は大都市圏を除いては極めて乏しい状態になっています。
これらを再構築しない限り社会の運営は難しいものになります。
(続く)