爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「水平線までの距離は何キロか? 文系でも楽しめる”およそ数学”の世界」沢田功著

物性理論が専門で石川工業高専准教授という著者が、=(イコール)だけを求める数学ではなくおよその解を求める実用数学について語っています。

小学校からずっと習っている算数・数学では当然のことながらイコールで答を書かなければテストで点を貰えませんが、実際の社会ではそのような必要は薄く、だいたいの解(およその解)が求められれば十分と言う事態が多いということです。
分数やルートも足し算だけで解決できます。
1/(1−X)という式は実は 1+X+X×X+X×X×X+・・・・という式に展開できるのですが、Xが十分に小さい場合は最初の2項や3項だけで表せます。つまり1/0.98=1+0.02で表しても良いと言うことです。

海岸線に立って海を見たとき、水平線が見えますがそれはどのくらい先まで見えているかと言うことも計算で出せます。これも地球の半径に比べ人間の身長はほとんど無視できるくらいであるということから、複雑な計算式もどんどんと削っていくことができ、5kmという答が出ます。
目の視力の計算にも近似式が利用できますが、そもそも視力の定義と言うのは視角が1分(1度の1/60)であれば1.0なんだそうです。a分の視角であれば1/aが視力と言うわけです。知らなかった。

イコール計算というものは数学では重要でしょうが、物理などの世界にはかえって邪魔になる場合もあるようです。およそ計算で全体を把握させた方が理解がたやすいと言う主張でした。