爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「ニッポン野球は永遠に不滅です」ロバート・ホワイティング著

著者は日本在住のジャーナリストで、スポーツから見た日米文化比較論を最近も盛んに出版しているようです。イチローや野茂についても書いていますが、この本はそれのはるか以前、まだ日本人が大リーガーになるなどということは考えられず、助っ人ガイジンと呼ばれる元大リーガーなどが入れ替わりやってきては活躍したり物議をかもしたりしていた時代の1985年に書かれたものです。

その当時は野球と言えば巨人という合言葉でまだ話が通る最後の時代だったかもしれません。V9時代ははるか遠くなったものの、ドラフトではほとんどの選手が巨人を希望し、トレードでは大金を積んでは有名選手を引っ張ってきてベンチで休ませるということをしていました。
今となっては夢のような話ですが、衛星放送も無く地上波の数チャンネルだけのテレビの1局は必ず巨人戦の中継を流しており、その放送を試合終了前の9時前に終わらせるのが妥当かどうかなどという議論がされていました。

この本の大部分は阪神のバースの大活躍以前に書かれたものですので、助っ人ガイジンがなかなか活躍できなかった事情についてあれこれと書いてあります。大物大リーガーとして鳴り物入りで呼んできてさっぱりだった、レジー・スミスやボブ・ホーナー、アメリカでは無名でも日本で花開いたリー兄弟、いずれも当時の日本のプロ野球球団のおかしな体制、審判の不公平なジャッジなどで神経質になりつぶれていった選手たちのインタビューから日米の野球の比較をしています。

バースの活躍はこの本の最後にあとがきで足されていますが、それ自体はすばらしかったものの最後に王の年間ホームラン記録に迫った時に8連続フォアボールで阻止された件についてもしっかりと記してあります。昨年ようやくその呪縛から逃れられたのは記憶に新しいところです。

この本で扱われた時代のその後、野茂の挑戦から始まり数々の選手の大リーグ行きの時代が始まりました。今は大リーグコンプレックスもかなり減ったかもしれませんし、WBCでの好成績で日本の野球もやるもんだという意識も増えているのかもしれません。
にもかかわらず、というかだからこそ、日本のプロ野球人気は下落したままです。著者の近著も読んでみたい気がします。どのように分析しているのでしょうか。