爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「屈辱の数学史」マット・パーカー著

何か思わせぶりなタイトルですが、内容は数や数式、数学といったものが引き起こした事件・事故・トラブルなどを紹介したものです。

今は社会の隅々にまで数というものが大きく関わっていますので、それによるトラブルも少なくありません。

そしてそれはちょっとした間違いであってもその結果が大きく、建造物などの崩壊、列車や飛行機の事故、金融関係の大損害といったものになり、多額の損害や人命を失うことにもなります。

 

著者はイギリスの元数学教師で現在はメディアや著書で数学に関する話題を広めているそうです。

それでも扱う対象は全世界から集めており、日本からもあの2005年にみずほ証券の売り注文、「61万円で1株」のところ「1円で61万株」と打ち間違えて大変な騒動となった事件が堂々の登場となっています。

 

数に関した事件といっても色々あるようで、計算式の不備、確率の取り扱い、統計、ランダム、単位、などなど、数学をきちんとやっておけば良かったと後から悔やんでも遅いという例がたくさん出ています。

 

数の数え間違いというものは文明の最初からつきまとっていたものらしく、メソポタミア文明シュメール人が残した粘土板でビール醸造の原材料を記録したクシムという名前の担当者が数字を間違えた記録が残っているそうです。

少なくとも5000年前のものであり、個人の名前が残っているものとしても最古のものだそうです。

 

1990年代にアメリカのサン・マイクロシステムズという会社である一人の社員のデータが何度入力しても消えてしまうという事件が起きました。

彼の名はSteve Null(スティーブ・ナル)、会社の人事部ではその名をコンピュータにそのまま入力してしまい、その当時の会計ソフトでは”Null”は「何もない」という意味であったのでそう認識されてしまったようです。

英米人ではその他にも「Test氏、Blank氏、Sample氏」などいろいろありそうです。

 

著者のパーカー氏はこの本を書くにあたり、多くの知人・友人から話を聞いたのですが、彼らの中には守秘義務があるとして話を拒むものも多かったようです。

しかし、このような失敗例は広く知られれば同じ失敗が少しは防げるかもしれません。

過ちから何かを学ばなければ人類共通の利益とならないでしょう。

まあ「他人の失敗は面白い」などと考えずに、人の振り見て我が振り直せと行くべきなんでしょう。