爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「理系思考 分からないから面白い」元村有希子著

毎日新聞の科学環境部記者の元村さんが、毎日新聞のコラム「発信箱」に掲載したもので、2003年から2007年頃までのものをまとめたものです。
表題は理系思考とありますが、内容はやはり理系の女性に関する話題も多いものとなっています。

我が家も昔から毎日新聞を購読しており、そこでは特に問題があるもの以外は記者署名が普通となっていますので元村さんの名前も以前から見知っていました。ご本人は教育学部卒ということでいわゆる「理系」ではないのですが、記者を始めてから科学部に配属されて理系の人々にふれあってきたようです。

これまで一貫として理系の技術者は文系の管理職より総収入が低く抑えられていたということで、収入重視の風潮が強まりとくに人材難が言われていますが、その一方で女性の理系進出ということも言われています。またそこでも女性の活躍を阻む社会の壁というものも厳しく存在しています。特に理系の社会だけが壁が高いわけでもないのでしょうが、そういった批判も強いものです。

2001年に野依良治さんがノーベル化学賞を取ったときにはちょうど政府がノーベル賞受賞者を増やすという目標を出して、科学者からは相当な不評を受けていた時期だったそうです。その折りも折り、ノーベル賞受賞記者会見で、野依市に「どうやって賞を取ったんですか」と聞いてしまい、先生を怒らせたのは元村さんだったそうです。

ノーベル賞受賞目標などということを言い出すこと自体が日本社会の科学無知ぶりを露呈しているというのが著者の意見です。博士の過多というのも大きな問題ですが、現在でもまったく快方に向かうということもありません。
当時で博士号取得者のうち「定職」を得られたのは100人のうちわずか56人だったそうです。科学者残酷物語と描写されています。