爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

”賀茂川耕助のブログ”を読んで No.1183 急速に広まるIoT

賀茂川さんの今回の指摘は、「IoT」と称するインターネットにあらゆる電気製品などをつなげてしまおうという策謀です。

 

kamogawakosuke.info

冒頭には、「そんなものを誰が必要としているか」を論じています。

洗濯機をネットにつなげる製品が出ていますが、洗濯が終わったことをスマホに知らせてもらいたいという人など、ほとんど居るはずもありません。

 

しかし、このような各家庭の電化製品使用状況を知りたい人々が居ます。

政府や諜報機関、そして使用状況などのビッグデータを使いたくて仕方のない企業などです。

 

ウィキリークスで暴露された諜報機関のデータ収集にも、このようなIoTは有用なのは間違いありません。

 

賀茂川さんは論じていませんが、自動車のコントロールを奪ってしまうことも可能なようです。

すでにそれによる事故も起きているという話もありますが、政府諜報機関による監視強化とともに、このようなハッカーによる犯罪の危険性もありそうです。

 

どうやら、使う側にとっては何も得にはならないもののようです。

築地移転問題が改めて示した「ゼロリスク」の呪縛 中西準子さんが久々にリスク問題について書いています

Wedge5月号の抜粋ということで、Wedge infinityに、今は産業技術研究所名誉フェローとなっている中西準子さんが「ゼロリスクの呪縛」という問題について書かれています。

wedge.ismedia.jp

築地市場豊洲移転計画に対し、豊洲の地下の化学物質汚染が問題化し、移転が棚上げとされどうしようもないように見えます。

たとえ地下水が汚染されていても、地上部には影響はないというのが当然の科学的見解と思いますが、それでは納得出来ない方が多いのでしょう。

 

中西さんはこれまでも「リスク学」というものの発展に力を尽くしてこられました。

その主張の中で基本的なものは「ゼロリスクというものはない」ということと、「何らかのリスクを下げようとすると必ず他のリスクが上昇する」(リスクトレードオフ)ということでしょうか。

 

 

今回の記事で中西さんが述べられていることも、「ゼロリスク」を追求しようとしてかえって混乱に陥った築地移転問題を、これまでの典型的なその表れである「福島原発事故避難」「BSE対策としての全数検査」とともに挙げてあります。

 

いずれも、どうしても少しはリスクが有るということを説明する責任を政府や担当者が放棄したためにかえってどうしようもなくなったという事態に陥りました。

 

この事態は、基本的には人々の科学的な理解が進むかどうかにかかっています。

その意味では日本人には難しいことなのかもしれません。

 

中西さんも最近はなかなかご活躍のお姿を拝見できないようになっていますが、まだまだその場は多いようです。

 

 

「再読:ハイブリッド日本」上垣外憲一著

この本は3年ほど前に読んだものですが、図書館の棚を見るといつも何か呼びかけているような気分にさせられ、このたび、もう一度読んで見ることにしました。

 

すると、結構でてきたのが「新たな発見」「前回は読み不足」といったもので、きちんと読書できていないのだということが再認識されました。

 

もちろん、それだけこの本が内容豊富であるということであり、ほとんどの本は二度と読む気もしないものなのですが。

 

そんなわけで、前回の書評と同じことを書く気はありませんので、付け加えることだけを書いてみたいと思います。

 

sohujojo.hatenablog.com

本書冒頭には埴原和郎氏の「二重構造モデル」についての言及があります。

私もこの二重構造に最初に触れた時は大きな衝撃を受けましたが、現在ではそのモデルではまったく不十分であるとされています。

二重構造モデルでは、縄文人弥生人(渡来人)の2つの集団が混じり合って日本人となったとされていますが、どうやら縄文人弥生人もとても一つにまとめられるものではなく、どちらも無数とも言えるバラエティーがあるものだったようで、二重構造などという単純化はできないものだったということです。

 

 

弥生時代にはすでに対馬海峡を自由に航行する貿易商人とも言える人々が居たのは確かですが、実は縄文時代にもそういった交易が行われていた証拠があります。

日本列島産であることが明白な黒曜石が朝鮮半島からも出土されており、その年代も相当古いもののようです。

 

その後も海峡を越えた交易は拡大し続けられました。当然ながら鉄などを始めとした半島側からの事物の方がはるかに有益であったのですが、日本側からの交易品としては玉(ギョク)、弥生土器、銅器などが見られるそうです。

また、証拠は乏しいものの交易品として奴隷もあったのは間違いないようです。

 

 

縄文時代人は一様ではないという様々な証拠が得られていますが、それ以前に「旧石器時代人」とも言える人々が居たとも考えられます。

彼らも数は少ないもののその痕跡を残しているようです。

遺伝子の研究が進展する中で、これまで主体であったミトコンドリアDNA(女性のみ)に加えて最近ではY染色体(男性のみ)の分析も進んできています。

そのY染色体のハプログループDと呼ばれるものが、日本人、チベット人、に加えてインド洋のアンダマン諸島の先住民に多いということです。

このグループが実は日本で旧石器時代から住んでいた人々に由来する遺伝子ではないかというのが著者の推測です。

 

このアンダマン人の言葉が興味深いものであり、日本語などと同様に膠着語に分類されるものであり、さらに名詞の分類が身体的特徴による部分によって為されるという変わったものであるそうです。

日本語の最も古い基礎概念がこのアンダマン語などと共通の言葉によるかもというのが著者の推論ですが、なかなか興味深いものです。

 

 

本書を通して語られている日本の「ハイブリッド文化」ですが、近代になりほとんど鎖国とした江戸時代以降、唯我独尊とも言える意識が国民の間に蔓延してしまいました。

 

国際化が進み、また少子化の影響もありアジア各国からの人々の流入(まだ”移民”と言ってはいけないのでしょうか)も絶え間なくなっているのですが、日本人側の意識としてはまだかなり排外的なものが支配的なようです。

 

農村にフィリピンなどからやってくる花嫁という人々もすでに相当数が入っているのですが、彼女たちが友達と電話で話す際に、タガログ語でしゃべるのをその家の姑が嫌がるそうです。

この考え方は日本人の多くに持たれており、それが国際結婚や移民というものを日本人が嫌がる大きな原因となっているようです。

そして、これは実は警察や入国管理、その他の行政にも広く分布している意識のようです。

姑は、「嫁はウチの家風に従ってもらわなければ」という意識であり、行政機関もまったく同じような意識そのものです。

その状況であっても、日本が金持ちである間は外国人も来てくれました。そうでなくなれば来なくなるでしょう。

 

 

なかなか盛り沢山な本でした。

歴史の話にとどまらず、現代の日本社会についての意見にも見るべきものがあったようです。

 

 

「世界地図から歴史を読む方法」武光誠著

武光さんは歴史に関する読み物を多数出版されており、他にも何冊か読んだことがありますが、広く(浅く?)世界の歴史について(基本通りに)記述されており、深みは期待できないにしても多くの知識を得ることはできます。

(なんかあまり褒めていないようですが、個人的な感想です)(多くの人にとっては有益な歴史知識が身につくことでしょう)

 

出張帰りの車内などで読んで、居眠りを誘うにはちょうと手頃なもので、この本も羽田空港ターミナルビルの書店のカバーがかけられていますから、最初は飛行機の中で読んだものでしょう。

(ここもなにか、けなしているようにも見えますが、そんなことはありません。読んでいるうちに怒りのあまり目が冴える本よりははるかにマシです。)

 

 

本書は「世界地図から」と最初にありますが、内容はそこよりも「民族」というものに大きな重みが与えられているもので、日本人のように民族対立というものに意識が低い人々にとっては貴重な知識となりうるものでしょう。

 

ただし、民族というものについて本当に深く考察したければ、このような本に書かれている事例を頭に入れた上で最近読んだなだいなださんの「民族という名の宗教」を読んだ方がためになるかもしれません。

sohujojo.hatenablog.com

そんなわけで、この本は一応基礎知識として外せないといった位置づけでしょうか。

 

 

中で、ちょっとエアーポケットに入りよく知らなかったことをいくつか。

 

スリランカ(セイロン)では民族対立から武力衝突が繰り返されてきましたが、BC5世紀ころからインドより移住してきたシンハラ人が王国を作っていました。

しかし、イギリスがインドを征服し統治をすすめるとイギリス人農場主の農園経営が盛んになり、インドから大量にタミル人労働者をつれてきたそうです。

その後、シンハラ人を主として独立したのですが、残されたタミル人勢力との対立が激しくなったとか。

ここにもイギリス植民地政策が影響しているということです。

 

アルメニアは世界で最古のキリスト教国だそうです。

ローマがキリスト教を国教とした392年より前の301年にキリスト教を国教にしました。

しかし、周囲の国がゾロアスター教、その後はイスラム教となる中で、それらと対抗しながらキリスト教を守ってきたそうです。

しかし、その後アルメニア王国が滅びアルメニア人は各地に離散しました。商才のある人が多かったために、各地で成功者となった人も多いようです。

 

 

民族というものは一つのフィクションとして作られるものかもしれませんが、それも続けば現実になります。

現実の世界で続いている民族紛争というものはなんとか解決しなければならないものなのでしょう。

 

 

「日本版NSCとは何か」春原剛著

NSCとは「国家安全保障会議」のことです。

アメリカでは1947年にトルーマンにより設置され、歴代の担当大統領補佐官(SA)にはキッシンジャーニクソン政権)やブレジンスキー(カーター政権)、スコウコロフト(父ブッシュ政権)といったそうそうたるメンバーが動かしてきました。

 

それに習い日本でもNSC設置を目指したのが安倍政権であり、民主党から政権を奪い返した2013年12月に国家安全保障会議設置法案を通してNSC設置にこぎつけました。

 

本書はその直後に出版されたもので、これまでもアメリカのNSC,そして日本での日本版NSC設置について詳細に取材を重ねてこられた元日経新聞編集委員の春原さんが書かれたものです。

 

アメリカでのNSCは良いことばかりをしてきたわけではないようです。しかし、一定の働きはしてきたようですが、政府構成が異なる日本でどうなるのか、不明な点も多いようです。

 

 

まずアメリカでのNSCの歴史から書かれています。

アメリカは直接選挙で選ばれる大統領に大きな権力が集中し、また政権の中枢から始まり多くのメンバーが政権交代によって入れ替わるというシステムになっています。

フランクリン・D・ルーズベルトは第2次世界大戦を勝利に導いた功労者とみなされていますが、その政治手法はかなり独善的であり、閣内一致などには配慮がないものでした。

それを是正するという意味もあり、後任のハリー・トルーマンが政権内外の「賢人」を招集し重要政策を審議させるということで成立したのが、NSCであったということです。

したがって、そこにはNSCを大統領のブレーキ役としても役立たせる意図があったようです。

 

そのような組織をまったく政権の構造が異なる日本に作る意味がどこにあるかは難しいものです。

そこには日本特有の中央官庁の「前例踏襲主義」の影響が強く、それを打破し「迅速な政策転換」「大胆な意思決定」ができる組織が欲しいという意志が働いています。

ただし、そのメンバーとして選ばれるのが中央官庁組織からの人材であれば、そのような役割を果たせる人間が居ることは期待できないということにもなります。

そうなれば、NSCを作る効果も薄く、かえって本家アメリカの場合にも見られる弊害の部分「虎の威を借る狐」を作るだけとも言えます。

 

しかし、冷戦後の世界の混乱の中で北朝鮮や中国の軍事力強化、各地でのテロ発生に対するには迅速な意思決定ができる組織が必要としてNSC設立に意欲的だったのが、安倍晋三石破茂前原誠司などでした。

 

ちょうどその議論が進んでいたところに起きた東日本大震災福島原発事故に対し、民主党政権の対応が見るも無残に破綻したことも、NSCのような危機対応組織が必要という雰囲気を作り出すことになりました。

 

民主党政権はその前の自民党政権の体質への反省から、「政治主導」を掲げましたが、それの実現には失敗しました。

それに代わった自民党安倍政権は元の「官僚主導」に戻すかのように見え、「官邸主導」をやり遂げようとしているように見えます。

 

 

日本版NSCにはやはり問題も数々あるようです。

屋上屋を架すだけではないか。

また、日本のような警察の勢力の強いところではそれとの関係はどうなのか。

文民統制がクリアできるのか。軍人がNSCのメンバーとなったらどうなのか。

等々です。

 

おそらく、安倍総理の思惑とは異なるでしょうが、日本版NSCの果たすべき使命とは「権力を補佐しながらその暴走を抑制しつつ、日々起こりうる事象に臨機応変に対処する」ことであるというのが春原さんの意見ですが、そうなりますかどうか。

 

日本版NSCとは何か (新潮新書)

日本版NSCとは何か (新潮新書)

 

 

 

 

「満州事変はなぜ起きたのか」筒井清忠著

最近読んだ本で、「大東亜戦争では中国と戦端を開いたのが間違い」という指摘を見て目からウロコという感がしたのですが、かと言って実際にそれを避ける方策があったとも思えないがという気もしていました。

sohujojo.hatenablog.com

歴史の「もしも」は無いというのが基本ですが、そこに至る経緯というものの中には少しの偶然が左右すれば違う方向に行ったかもというものもあるように感じます。

 

しかし、今回読んだこの本では、日露戦争から満州事変に至るまでの日中その他関係各国の動き、思惑、謀略、等々様々なものが絡み合い、ちょっとどこかを動かしたからと言ってどうしようもない。結局は日中戦争の泥沼に入るしかなかったのだろうという思いを深くしました。

 

 

本書は、日本近現代史がご専門の帝京大学文学部長の筒井さんが、日露戦争後から満州事変勃発までの歴史を詳細に検証されたというもので、生半可な歴史知識しか持たない程度の私にとっては未知の領域の話とも言えるものでした。

 

本書冒頭にも書かれているように、日本の敗戦に終わりその後の進路を既定した日米戦争(太平洋戦争)がどうして起きたかと言えば、日中戦争が直接の原因でした。

そして、日中戦争がなぜ起きたかと言えば、1931年の満州事変がその原因と言えます。

しかし、満州事変がなぜ起きたかということになると、よく分かっていないのではないか。これは著者が見たところ専門の研究者であってもはっきりと整理されていないのではないかということですので、素人はほとんど分かっていないと言えそうです。

そこのところを詳細に歴史をたどり解説をしようとしているのですが、細かい事実などはうろ覚えの身にとっては猫に小判かもしれません。

 

そんなわけで、本書記述が経時的に並べてありますので、それを引用するのみに留めます。

 

対華21か条要求問題

日貨排斥運動

5・4運動

ワシントン会議

排日移民法

国権回収運動

国共合作

北伐・南京事件

済南事件

張作霖爆殺事件

中ソ戦争

満州事変

 

概略を見ての感想だけ。

一時は軍縮にこぎつけたワシントン条約体制ですが、最終的に崩壊させたのは日本の軍事行動であったとはいえ、そこに至るまでの英米・中国の態度もかなりの問題があったようです。

 

本書の最後に記してあるものは、歴史的事実だけでなく著者の日本の行動に対しての感想が含まれていますが、そこには外交・軍事のあちこちにある「未成熟な対応」により国際的な立場をさらに悪化させたということです。

他国の行動も褒められたものではないことが多々あるにも関わらず、それをきちんと指摘する冷静な記者会見などといった方策もなく、日本の行動に対する印象を悪化させていきました。

また、特に軍人に見られたのが、ずさんな謀略事件を起こすことが国際的に日本の立場を悪化させるのだという事実についての認識がまったく希薄であったことです。

張作霖爆殺事件や満州事変といった一部軍人の暴走による謀略事件がすぐに真相が暴かれ国際社会からの印象を極めて下落させました。

さらに、大衆の世論も新聞の煽動により満州事変を熱狂歓呼で迎えるなど、軍人の行動を後押しする圧力となったことも無視できません。ここだけ捉えても戦争責任が一部軍人だけに無いということは明らかでしょう。

 

読み応えのあった本でした。ちょっと有り過ぎたかもしれません。

 

満州事変はなぜ起きたのか (中公選書)

満州事変はなぜ起きたのか (中公選書)

 

 

トランプ大統領、韓国にTHAAD費用負担を求める。

自らの政権安定のために北朝鮮に圧力をかけているように見えるトランプ大統領ですが、その一環として韓国に配備をする迎撃システムTHAADにかかる費用の12億ドルのうち、韓国に10億ドルの負担を求めるということです。

 

toyokeizai.net

当然のことながら、韓国の大統領選を今戦っているムン・ジェイン候補陣営はこの話は一蹴したとか。

 

なお、負担を求めると言ってもシステムを韓国に売却するということではなく、あくまでもアメリカ軍が運用する体制を守りながら、金だけは出させるということのようです。

 

まあ、商売人そのものですね。

しかも自分で商売のネタを作り出し、それで巨額の請求をするとは。

 

日本もTHAADシステム導入などということをAさんは言い出しているようですが、日本には売却、韓国はアメリカ軍負担だと、私は思っていました。

しかし、韓国にも負担させるとなれば、日本には完全負担でしょう。二カ国分だったりして。

 

ランプの本性がさらに明らかになるニュースでした。