さまざまな政策を進めるために世論調査により国民の声を聞くということはよく行われることですが、その世論調査の手法自体かなり誘導的なものもあり問題を含むものです。
しかし、本書で扱っているのはそれ以前「世論(民意)というものはかなり恣意的に誘導されているのではないか」という疑問のもとにフリーのジャーナリスト斎藤さんが取材を重ね色々な分野での政府の側の国民世論の誘導状況を明らかにしたものです。
扱われている分野は、原子力神話、国策PR、事業仕分け、道路建設、五輪招致、仕組まれる選挙、捕鯨問題という多岐にわたるものです。
原発推進の国策の元、さまざまな原子力神話が作られそれを浸透させるという世論誘導が行われてきました。それに反対する勢力は全力で潰されるということが起きたために、福島県知事であった佐藤栄佐久氏に対する冤罪事件も起きています。
それが福島原発事故が起きたために多くの事実が明るみに出てきています。
かつては、経済産業省が進めた「全国エネキャラバン」というPR戦略がありました。
各都道府県で大規模に開催されてきましたが、電通が企画し巨額の予算を使い、シンポジウムには名前だけは有名な人々を招致してヤラセの討論をさせるという内容でした。
それにはそのウワベだけを報道するマスメディアも絡んできます。
温暖化対策という大きな国策に沿ったPR活動も怒涛のようなという表現で著者は表しています。
その影には広告界の市場が急減しているという事情もあり、国策にそった広告掲載というものが広告市場を潤しているということも挙げられます。
これが「世論操作」とどう違うのか、危険な傾向を示しています。
郵政民営化についてのPRも巨額なものであったのですが、それが「郵政選挙」に影響を与えたとも言えます。そうなると選挙自体もその広告費で買ったということにもなります。
マスメディアもその広告主には逆らえません。大手企業の不祥事には報道が及び腰になると言われていますが、政府に対してもそういった対応をしているならば大問題です。
オリンピック招致の問題でも、国民のオリンピック受け入れ世論というものが捏造されていたようです。
そもそも、世論調査ではネット調査というものの妥当性が極めて怪しいものと言われているのですが、それを使うという反則技もあったとか。
広告という手法を使えばマスメディアの支配も簡単に行えるということでしょう。
政権だけでなく報道も腐れきっているようです。