爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「池上彰の メディア・リテラシー入門」池上彰著

最近「リテラシー」という言葉をよく聞くようになりましたが、この本は「メディア」に対するリテラシー

本の帯にあるように「テレビ・新聞・インターネットにだまされない」ということです。

 

昔ほどは新聞やテレビの報道を完全に信じ切ってしまうという人も居なくなったかもしれませんが、それでも繰り返し言われれば影響は受けるでしょう。

そして、昔はなかったインターネットというものは、その正確さはテレビと比べてもはるかに低いにも関わらず、これに影響される人々も増えています。

 

ならば、何を信じるのかというのは難しいことでしょうが、できるだけ広く知識を集めて判断するというしかないのでしょうか。

 

池上さんはNHKで記者として長く働き、その後キャスターとしてTV番組にも出演するようになったため、テレビの裏側というものも熟知しています。

TV番組はすべてが編集されているということも、視聴者がつい忘れがちなことかもしれません。

また、NHKと民放では大きく異なることもあり、NHKが政府に影響される度合いが強いのに対し、民放ではスポンサーとなる大企業などに弱いということも忘れてはならないでしょう。

 

新聞というものは、最近は購読者数が激減しているようですが、まだまだ宅配の部数が多く、これは他の国々と比べても特異な状況のようです。

また、全国紙、ブロック紙、地方紙の存在も大きく、その性格により記事の中身も違いがあるのですが、ほとんどの人は1紙しか読んでいないのであまり気づいていないようです。

 

メディアに大きな影響力を持っているのが、「広告代理店」と「PR会社」だということも、一般視聴者が忘れがちなことです。

多くの記事の裏にはPR会社の存在が隠れています。

多摩川にアザラシが迷い込んだ「タマちゃん騒動」も川の環境浄化を宣伝したいPR会社の思惑から広まったとか。

選挙キャンペーンもPR会社が最初から参画し構成していきます。

企業の不祥事会見のやり方の指南もPR会社が関わるとか。この上手い下手で企業イメージが大きく変わります。

 

アメリカでは戦争キャンペーンもPR会社の企画により動きます。湾岸戦争クウェートからイラク軍を追い出し、解放されたクウェートに報道陣が入ると、アメリカ国旗を振る国民の姿がありましたが、彼らに国旗を渡したのもPR会社だったとか。

 

「イジメ自殺」が相変わらず報道されます。

テレビなどではセンセーショナルな内容で報道することもありますが、これは非常に危険な一面があります。

テレビで「いのちの大切さ」を強調すると、それを見た子供が「それだけ大切なものを投げ出せが世間は大騒ぎしてくれる」と思うかもしれません。

また、自殺した子供の遺書にいじめた子の名前が書いてあると世間はその子や親を批判します。

これも、それを見ていじめに悩んでいる子供が「いじめている奴の名前を書いておけば世間が復讐してくれる」と思います。

自殺を防ごうとして報道しているはずが、模倣して自殺しようとする子供を増やしていることにもなります。

あえて報道を控えることが自殺連鎖を防ぐことにもなります。

 

やはりここでも「リテラシー」を身につけることは必須のようです。

 

池上彰のメディア・リテラシー入門

池上彰のメディア・リテラシー入門