爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

Campylobacter 食中毒

以前からよく参考にさせて頂いている渡辺宏さんという方の「安心 食べ物情報」というサイトでまたカンピロバクターの食中毒が増えているという情報がありました。http://food.kenji.ne.jp/review/review787.html
重症例は少ないとは言えかなりの発生件数があるもので、届け出ない潜在的なものまで含めれば相当数に上ると考えられます。

Campylobacterという細菌は動物の腸の中に生息するもので、「微好気性」という特殊な性質を持っています。これは酸素濃度が10%以下の環境でないと生育できないと言うもので、通常の空気の中では(酸素濃度20%程度)繁殖できないばかりか、どんどんと死滅すると言うものです。
さらに繁殖できる温度も30度以上と高く、これは生育環境が動物の腸内でそれに特化したと言うことを示しています。
牛や豚、鶏など家畜の腸内にも生息しており、それらの動物は人間と異なりこの菌が生息しているからといって病状が出るわけでもなく健康に生活しているので何の問題もありません。

問題は、食肉として出荷するために屠殺する際に起こります。腸管、すなわち内臓の一部ですがこれを傷つけて内容物が飛び散ると肉に付着する可能性が強いことになります。カンピロバクターが腸内で生育している家畜であってもその肉の部分にはもともとこの菌はいませんので危険はないのですが、腸内の内容物で飛び散るととたんに菌で汚染されることになります。

しかもカンピロバクターはほんの数百個の菌が取り込まれることで感染する可能性があります。これは病原大腸菌O157などとも共通なのですが、人体の免疫作用を受けにくい性質を持っているためにごく少量の菌が取り込まれただけで感染してしまいます。微生物の場合はほんの一つまみで数億個の菌がいるということになりますので、数百個などと言うものは見た目にはきれいに見えても付着していることは十分に考えられます。
屠殺の方法も担当の方々が工夫を凝らして内臓が傷つくことの少ないように衛生的に解体するといった方策が取られるようになってきているために、大きな動物、牛や馬では内臓が傷つけられ中の菌を含む内容物が飛び散ると言ったことは比較的少ないようなのですが、小型の鶏ではこれがなかなか上手く行かないようです。そのために鶏の肉へのカンピロバクターの付着というのは非常に多く、数十パーセントの桁で検出されるようです。

ここで腹立たしいのは、よく鶏肉専門の食堂の店主などで「うちの肉は鮮度が良いから生で食べても大丈夫」ということを公言する者がいることです。
カンピロバクターという菌の性質を全く知らないままそういうことを言うのでしょうが、上記したように、この菌は空気中で増えると言うことは全く無く、屠殺時に付着した菌が残っているだけなのです。したがって、新鮮なほど菌が多く、かえって古くなるほど菌も死滅していくと考えられます。実はカンピロバクター食中毒に関しては、「新鮮でない肉の方が安心」なのです。(もちろん、大腸菌などは古くなるほど増える可能性はありますので、無謀なことはしないように)

カンピロバクター大腸菌と同様に(ついでに言えばノロウイルスも)加熱には弱くきちんと火が通っていれば死滅して毒素を残すこともありません。とにかく生肉、特に鶏の生肉は絶対に食べないようにして頂きたいものです。店の店主が大丈夫ですよなどと言っても信じてはいけません。