爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「カンピロバクター食中毒に注意と厚労省呼びかけ」という毎日新聞記事。記者も理解してないんだろうな。

厚労省が「カンピロバクター食中毒に注意」という呼びかけをしたという毎日新聞記事です。

 

 mainichi.jp

 

その趣旨自体には間違いは無いのですが、文章のあちこちに不適切な部分があり、やはりこの問題の本質は記者も理解していないのだろうなということが分かります。

最初の部分ですが、

刺し身、たたき、ユッケ……。生や半生の鶏肉に付着した細菌「カンピロバクター」による食中毒が多発しているとして、厚生労働省が注意を呼び掛けている。食中毒はもともとジメジメした梅雨の時期に多発する。今年は、新型コロナウイルス対策の緩和で飲食店を利用する機会も増えており、識者は食中毒の急増を懸念している。

 

ここの何がおかしいかというと、「カンピロバクター食中毒が多発している」に続けて「もともとジメジメした梅雨の時期に多発する」という文章が何気なく続くところにあります。

他の多くの食中毒微生物、大腸菌黄色ブドウ球菌等々の菌は酸素がある状況でも増殖ができ、その適温も30℃程度、しかも湿度が多ければ増殖に最適であるために、この時期に食中毒が多発するのです。

しかしカンピロバクターという微生物は全くその増殖条件が異なります。

微好気性細菌といい、酸素濃度3-15%という限られた条件でしか増殖できません。

つまり普通の大気中では酸素濃度が高過ぎ増殖はできないのです。

(なお、完全な嫌気的条件でも増殖できません。これは動物の腸管内で生育するというこの菌の性質によります)

 

それならばなぜ食中毒を起こすのか。

これはカンピロバクターがもともと鳥などの腸管に生息しており、それが鶏の屠殺・解体に際に漏れ出して肉などを汚染してしまい付着しているためです。

増殖はできないと言っても、大気中で死滅していくということではなく、生存したままです。

そしてカンピロバクターは非常に少数を取り込んだだけでも人体の中で速やかに増殖し食中毒を引き起こします。

 

つまり「梅雨のジメジメした時期」とカンピロバクター食中毒は関係なく、いつの時期でも注意が必要ということです。

 

また、鹿児島県は鶏肉生食の食習慣がありますが、そのため行政も取り扱いには注意を払うように指導をしています。

それについての記述も、

カンピロバクターによる食中毒は毎年2000人前後で推移している。鹿児島県のように鶏肉の生食に厳しい衛生基準を設けている地域もあるが、7割は飲食店で起きており、注意が必要だ。

こういったもので、何か隔靴掻痒とい感覚がする文章です。

実は、鹿児島県の衛生基準は鶏の屠殺解体において内臓などのカンピロバクター生息部位の扱いをきちんとすることが肝要ということを主とするもので、飲食店などの取り扱いよりもそちらがポイントです。

この文章では飲食店での食中毒が多いということで、その扱いが問題かのように取れます。

 

実際には無神経な解体で内臓を傷つけて内容物が肉に飛び散ればカンピロバクターが付着してしまい、飲食店で購入してからはどうしようもありません。

 

このようなカンピロバクター食中毒を避けるには、とにかく鶏肉の生食を避けることしかありません。

どんなに飲食店の店員が「うちの鶏肉は鮮度抜群だ」などと言っても食べないことです。

 

毎日新聞も小島正美さんがいた頃であればこのような記事は無かったかもしれません。