爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「日本人の起源を探る」隈元浩彦著

本書は日本人の起源という問題を扱っていますが、著者の隈元さんは学者研究者ではなく毎日新聞の記者からサンデー毎日の編集者となったという方です。

しかしこういった考古学・人類学的な興味が非常に強く、多くの専門家に取材してこの本をまとめました。

ただし、出版が2001年ということで、現在は主流となったともいえるDNA解析による人類起源の解析といった成果はまだそれほど出ていない時期であり、骨や歯、土器などの遺物解析といった方法論の専門家の意見が多かったというのも仕方ない時期ではあります。

それでも、考古学人類学の大家である江上波夫、網野善彦をはじめ、日本人起源の二重構造モデルを提唱して学界に大きな波を起こした埴原和郎など多数の専門家の意見を元にこの本を書いています。

 

今ではほとんど疑う人もいなくなったと言えますが、日本列島には大陸から何度も多くの人々がやってきて、それが混在し徐々に同化して日本人というものが形作られてきました。

しかし以前には縄文人が進化を遂げて弥生人となり、さらに現代人になってきたという学説が支配的でした。

埴原は骨の形態を研究する考古学者ですが、他にも多くの研究者たちが証拠を揃え、弥生時代につながる比較的新しい時代に多くの渡来者が日本列島に入ってきたということを立証してきました。

 

この本が書かれた20世紀末はまだそれが完全には普及せず、「縄文系」と「弥生系」は別の系統であったということから議論していかなければならなかった時期でした。

 

しかし、その後のDNA解析技術の長足の進歩は激しいもので、今では縄文人が単一の系統だったということもほぼ否定されているようです。

今後もさらに学説は変わっていくでしょうが、先人の業績のもとに新たな知見が確立されていくでしょうから、やはりかつての学説を知っておく必要はあるのでしょう。