学問の世界はその分野が細分化されていると言われます。
しかし外の世界から見るとそれはよく分からないことのようです。
これは特に今から進学し専門分野への挑戦を始めようという人々にとっては大きな問題です。
良く知らないまま進学してしまい、入学してはじめて自分の思っていたものとは違うということに気付き、やる気を失ってしまう学生も多いようです。
そこで、文系のいくつかの分野についてその専門家たちが解説したものが本書です。
取り上げている分野は、言語学、文学、社会学、政治学、国際関係学、経済学、経営学、法学と、人文科学、社会科学の中から選んだものです。
そのため、本書が役に立つ読者としては次のような人々が想定されています。
1,大学の学部・学科を正しく選びたい高校生や浪人生
2,大学編入学のための学部・学科を正しく選びたい専門学校生、短大生、大学二年生
3,学部・学科を横断して幅広く専門分野を学びたい大学生
4,年齢を問わず、再度学問を幅広く学びたい人
5,論理的かつ批判的に社会現象を分析するための枠組みを知りたい人
主な読者対象は1から3までの学生さんでしょうが、せいぜい4,5が部分的に引っかかるかどうかの私でも読んで良いのでしょう。
大学も理系、就職してからもその分野が主で仕事をしてきた私から見ると人文・社会の専門分野というのは侵しがたい聖域のように見えるところで、まあ何をやっているのかよく分からないといったものかも。
そういう意味ではバリバリの専門家がその分野の一端を見せてくれるというのは興味深い内容ではあります。
政治学の分野では各国の政治体制の長所短所と言ったところも扱うようです。
日本の議院内閣制、アメリカなどの大統領制といったものを比較した場合、どうしても大統領の方が「強く」、首相は「弱い」と言ったイメージがありますが、どうやらそうでもないようです。
日本の首相は議院で多数を占める政党の領袖でもあるため、議院も統括でき内閣も動かしますが、アメリカの大統領には法案の提出権もないとか。
ただし、日本の参議院という制度はイギリスの二院制とも異なり、同じような一般公選制の選挙制度で衆議院と並び立つという意味では特有のものだそうです。
そのために「両院ねじれ現象」なども生じるとか。
法学では六法全書を丸暗記といったイメージもありますが、それよりも大切なのがこれまでの判例を比較検討することだそうです。
その具体例も提示して説明されており、門外漢から見ても分かりやすい内容となっているようです。
ただし、もしもこの本を読んで法学を目指す人がいればその先行きはとてつもない努力の必要性が待っているのでは。
まあ甘い分野などあるわけもないのですが。
高校生の頃にこういった本を読んでいれば少しはその先の人生の選び方が違っていたかもしれません。