爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「SF水滸伝」石川英輔著

石川さんは1976年に「SF西遊記」を発表し作家デビュー、それに続いて発表したのがこの「SF水滸伝」です。

その後は大江戸シリーズの小説や、江戸時代の生活などを取り上げたノンフィクションなども数々執筆しており、こちらの方が真に書きたかったものなのでしょう。

 

とはいえ、作家としての知名度を上げていったのはこの初期のSF版の古典文学でした。

 

水滸伝は中国の明代に成立したと言われていますが、それ以前にかなり長い時をかけて作られました。

舞台は宋の時代にとられており、実際に梁山泊宋江らが立てこもった反乱が起きたのは史実のようですが、その他の話は作られたものでしょう。

 

この小説では元の水滸伝では108人の豪傑がそろうところ、9人だけに絞っていますがやむを得ないところでしょう。

しかし宋公明(宋江)、呉用、魯知深など人物の名前は原典に準じたものとなっており、その性格も同様です。

 

ただし、舞台ははるか未来、地球がもはや住めなくなり(氷河化のためとしています)他の星への移住が実施され、その中で中国からの移民団が国を作った天球星という星での物語です。

そこでは高度に発達したコンピュータ技術により、政府の主要業務である立法化と官僚や政権担当者を選考することはすべて自動化されています。

しかしその機能が徐々に変質し、極悪非道な人物でなければ官僚にもなれないということになって・・

といった方向から話を進めていきます。

 

まあちょっとSF的な素材が強すぎるせいか、原典の水滸伝のようなわけにはいかず、少しこじんまりとしたような印象になってしまったかもしれません。