爽風上々のブログ

熊本の片田舎に住むリタイア読書人がその時々の心に触れたものを書き散らしています。読んだ本の感想がメインですが(読書記録)、エネルギー問題、食品問題など、また政治経済・環境問題など興味のあるものには触れていきます。

「酒池肉林 中国の贅沢三昧」井波律子著

酒池肉林といえば、中国古代の殷王朝の最後の王、紂王が池を掘って酒を満たし、木に肉を掛けて宴会をしたという、贅沢を表した言葉です。

 

そういった、王や皇帝の贅沢の他にも、貴族の贅沢、商人の贅沢など様々なものがあります。

ただし、中国の場合はその時代も微妙に違い、皇帝たちは古代から隋まで(その後も部分的に見られますが)、貴族は魏晋南北朝の時代、そして商人たちは宋代以降に全盛期を迎えます。

これは社会で金が一番集まりやすいのはどこかという、社会構造によるものと思いますが、そのせいか贅沢の質も違いがみられるようです。

 

皇帝の贅沢はとにかく自分の権力を誇示したいという現れ。

秦の始皇帝が巨大な王宮や陵墓を作らせたり、隋の煬帝が大運河を掘らせたというのは権力の大きさを見せつけるという意味が強かったのでしょう。

 

貴族たちの贅沢は、当時の知識階級でもあったことから、知識の誇示、洗練された趣味の誇示と言った方向に向かいます。

中国ではその後は科挙制度による官僚制になるため、貴族が政治的にも権力を持ち、ということは金も集まるという時代は短いものでした。

しかしその間にも記録に残るほどの贅沢をした人々の名は残っています。

晋の皇帝武帝が臣下の王済の家を訪れたところ、食器にはすべて瑠璃の器を用い、ブタ料理が非常に美味しかったのでそのわけを聞いたところ、ブタに人乳を飲ませていると答えたそうです。

 

商人の贅沢はあまり正式な史書には残っていませんが、あの有名な小説、「金瓶梅」に描かれています。

小説の舞台は宋代になっていますが、実際には書かれた時代の明の頃の商人を描いています。

西門慶は薬屋ということになっていますが、その当時の商人でももっとも栄えていたのは塩商で、これを意識していたのでしょう。

内容は主人公の奔放な行動ですが、多くの女性登場人物も主人公に負けず劣らずの強欲ぶり、主人公を十分に利用しています。

金に物を言わせてやりたい放題。

下手に知識など振りかざさないだけ可愛いものかもしれません。

 

贅沢とは全く縁のない私ですが、空想をめぐらす時間だけは使えるのが贅沢というものでしょうか。